04年01月04日(日)
 去年なのですが浅草演芸場に落語を観に行きました。5年ぶりくらいに寄席に行ったのですが、やはり寄席の独特の雰囲気がたまらなく好きな己を再確認しました。学生の頃は一人で学校帰りに、デパートの地下で弁当買って、新宿の末広亭に行って、コーラ飲みながら弁当食って、だらだら五時間くらい、ダラダラ落語や講談を聞きながら、ああ俺学生なのにこの老人のようなダラダラした時間の使い方、この感じタマラネエと一人悦に入ってたのでした。そしてこのような時にはバンバカ笑える漫才やコントなどよりも、やはりアンタどうしちゃったのよといった芸人の方が高座なんぞにあがってると、己の過ごしてる無駄な伸びきったゴムの様な時間が、さらにビヨンビヨンになって、寄席の独特な雰囲気の溶けていくのです。
 だから、厳選された演者が出揃うホールとか国立演芸場で観る落語よりも、やはり大いに無駄を感じさせてくれる寄席落語が僕は大好きなのです。色川武大が言ってます「しびれるくらい退屈な芸、これにしびれると中毒になります」と、そしてそれは「退屈な風格が出てくる」と、寄席にはこのしびれるくらい退屈な芸が溢れてます、なんせ30年も前から毎日同じ芸をしてる方とかザラにおりますよ、大変下手糞な手品のおばちゃんとか、もう亡くなってしまいましたが、身体がずっと震えてて、それで独楽まわしの曲芸をやる人(名前忘れた)、この人の事を昔ビートたけしが言ってたけれど「あの震えは昔ヒロポン中毒だったんだよ」とか、あと桂文治ね! この人は格好良いんですよ、高座の着物が必ず黒か紺で、今回も出てたのですが、昔聞いた時の方が歯切れがよく話も面白かった気がして少し寂しかったです、しかし着物と所作はやっぱ格好良かった、この人相当なモダンボーイだっだったんだろうね、文治は昔、練馬の高速入り口で弟子の運転する車の後部座席に乗ってるのを見つけて、その時、僕等の車運転してた内倉君に俺が興奮して「文治だ!文治だよ!」と言ったら内倉君が車 Uターンしてチェイスしてくれましたよ、そして車を隣につけて、じっくり見せてくれました、文治はシルクハット被ってて恰好良かった、しかしあまりにもジロジロこっちが見てたから怪しんでました。この文治は言葉使いにはうるさくて、高田馬場駅の駅長室に怒鳴り込みに行った事があります、高田馬場の本当の読み方は「たかたのばば」なんです、しかし駅のローマ字表記には「 TAKADANOBABA」(たかだのばば)となってて、それで文句言いに言ったらしいです。今どうなんてんだろう? もし「 TAKATANOBABA」になってたらそのれは文治のおかげ、まだ「 TAKADANOBABA」になってたら、どなたか文句言いに行ったらいかがでしょうか。それとボンボンブラザース、学生のころ観た時とまるっきり同じネタ同じ芸をやってって感動しましたよ、このボンボンブラザース、お手玉や曲芸、ジャグリングをやるんですが、靴下は必ず通勤快足みたいなの履いてるんです。
 それで最近、年明け、知人に会ったのですが、何故か彼「ほれ見てくださいと」鞄からお手玉出してやりだしたんです。聞けば「正月あまりに暇だったから練習した」と、彼は最近、周辺の人物の人生がドンドン回り出してるのに対し、己の回ってない人生に不甲斐なさ感じ、お手玉をマスターして「今年は変化のある、良い年に絶対してやってやるぞ!」と言ってるです、しかし年の初めが「お手玉」ですよ、これ、色川武大の言ってた「しびれるくらい退屈な芸、これにしびれると中毒になります」に、自ら身を投じちゃってるじゃないの、凄いよまったく! 今年の豊富と裏腹な、なんという潔さ。
 でもね最近こんな若者居ませんよ、皆「変化変化!」「グローバルだ!」「情熱と愛だ」「前進だ」「エロスだタナトス」だばかりでしょ、しかしこんな世の中にあえて「お手玉」を選んだ彼、実は、「変化とは薄っぺら精神の突貫工事だ!」「グローバルとはただの求心欠如だ!」「情熱と愛は砂漠化現象の始まりだ!」「前進なんて墓参りを忘れたアル中だ!」「エロスとタナトスなんて虫には通用しねえ!」と云う事を世の中に一石ならぬ「お手玉」を投じようとしてるのではなかろうかと。
 僕は彼の退屈からのビッグウェーブに打ちのめされました、そして退屈以下に成り果ててしまいそうな己や鉄割に危機を感じ、なんとかせねばと、毎度の事ながら思うのでありました。ありがとうお手玉!
 2月公演は、内倉君からの提案により、その退屈さを掘り起こし再確認して何かに昇華しビッグウェーブにしましょうと云う事で、過去に葬ってしまった作品や一度しかやらなかった作品等を再構築して公演してみようとなった次第なのであります。しかし僕等は退屈さをあえて作ろうとはしませんので、皆さまは大いに楽しめると思いますし、見た事も無い演目のオンパレードかもしれませんので、おおいに、痺れを感じてください、そして30年後もし公演があったとしたら、その時にまるきり同じ事やるので、退屈を思う存分感じ痺れてください。
 
 追伸:お手玉最高! 頑張れお手玉君! 君が空に放り投げるお手玉、いつか誰かにぶつかって、痺れて落下、君の目の前に落ちてくるよ。それと新しい名前献上「退屈ビッグウェーブお手の玉」略して「タビー玉の助」 次回公演、過去の自分は死んだとして、新たにこの名前で舞台に挑む気はないだろうか? それと紹介者一人確保(現在パリ旅行中)、連絡待つ。

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雑記書手紹介

戌井昭人
東京生まれ(調布育ち)
鉄割の台本を書くの担当。あと変な動きとか考えるのも担当。
最近声がガラガラになってきている。だいたい変なおっさんの役担当。
趣味は歩くこと

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