03年02月03日(月)

 最近ちまたで何かと話題のレッシグさんでありますが、去年の末に翻訳された『コモンズ』に関する記事がHotWiredにアップされています。

■レッシング教授の『コモンズ』を読む ー日本社会に投げかける問題

 レッシグさんの主張を簡単に要約すると、「著作権至上主義は文化の衰退をもたらす(Hotwired)」ということで、インターネットの世界的な普及に伴い、より拡大していく著作権産業と著作権法に対して、「アイデアは人類の共有財産」という立場から警鐘を鳴らし続けています。

 アメリカの著作権法は、「ミッキーマウス保護法」と呼ばれています。アメリカが建国した当時、著作権法は14年(17年?)年でした。この法律の当初の目的は、著作権を所有者に保護するというよりはむしろ、著作権を個人あるいは企業に独占させないことで、そこにあったのはギブアンドテイクの精神でした。その後、著作権産業の運動により保護期間の延長が何度か行われ、ミッキーマウスが誕生した1928年、著作権の保護期間は56年間になっていました。ですから本来であれば、1984年にはミッキー・マウスの著作権は切れるはずだったのですが、1976年に再び期間が75年間に延長され、しかもその時点で保護下にあった著作権にもその変更が適応されたために、ミッキーマウスの著作権が切れるのは、2003年に延長になりました。さらに1998年、再び著作権の保護期間は延長され、今度は95年間にまで期間が延びました。つまりミッキーマウスの著作権が切れるのは、2023年ということになります。そのような経緯から、ミッキーマウスの著作権が切れそうになる度に延長されるこの著作権保護法は、一般に「ミッキーマウス保護法」と呼ばれています。

 ここでレッシグさんが問題としているのは、このように保護期間の延長を繰り返していては、著作権は永遠に法律の保護下にあり、そのように保護されたモノは、人類の共有財産に成り得ないということで、この問題に関して、NHKで去年放送した『変革の時代』の第三回「”知”は誰のものかーインタネット時代の大論争」という番組の中で、レッシグさんは全米映画協会の会長であるジャック・バレンティさんと討論をしています。「人類の共有財産」という立場から話をするレッシグさんに対して、バレンティさんは次のように答えます。

ミッキーマウスの著作権を千年間に延長したとして、それがなぜ、文化の進歩を抑制することになるんですか。逆にハリーポッターの著作権をなくして、世界中の人に無料で提供すれば、民主主義が広まるとでもいうのですか。

 1928年に誕生して散々稼ぎまくったミッキーマウスと、ここ数年に誕生したハリーポッターを同じレベルで語るのは論点がずれているような気もしますが、バレンティの主張にみられるように、著作権主義者の主張は一貫しています。著作権は、芸術家や創作家が安定して作品を作り続けるために必要な法律であり、著作権なくして作品の創造は有り得ない。著作権に守られて初めて作家は作品を生み出せるのであり、もしもそのような法律的保護なくなれば、世界中に海賊版が横行し、クリエーターの将来は危ういものとなり、誰も作品を生み出そうとは思わなくなるだろう。

 この種に議論は難しいもので、自分の利益のことしか考えない消費者と、自分の利益のことしか考えない生産者の詭弁合戦になりがちです。個人的な意見を言わせてもらえれば、現状の著作権法が定める期間は長すぎると思うし、ディズニーの厳しすぎる版権管理にはうんざりさせられますけれど、だからと言って何も知らずにへえこらとレッシグ万歳とも言い兼ねます。ひとつだけはっきりしているのは、鉄割のちらしやサイトでは人の著作物を勝手に使用したりしているので、いつか訴えられるのではないかとびくびくとしているということで、そのときは土下座をして謝る所存でございます。リスペクトということで。サンプリングということで。

 『コモンズ』という書籍に関して興味はあるのですが、読んでもおそらくほとんど理解できそうにないので立ち読みすらしていません。あちらこちらで掲載されているレッシグさんの記事なんかを読んで、ほえーとかふえーとかため息をもらして鵜呑みにしているだけです。とても重要な提言をしているのだろうということは理解できるのですけどねえ。もし『コモンズ』を読もうと思われる方がいらっしゃいましたら、上の記事を書いた方のこちらの解説がとても有用だと思います。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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