02年07月02日(火)
 古本屋で「太陽」の南方熊楠特集を購入。
 帰宅して、さあ読もうとページを開いたところ、中に新聞の切り抜きがたくさん挟まっていました。

 切り抜きは、主に粘菌に関するもので、粘菌に知性があるかもしれないという記事や、鉱物を五万点集めた、ある料亭のおやじさんの記事などなど。各切り抜きには、赤ペンで日にちと新聞名が書き込まれていました。普段であれば、気にも止めない記事ではありますが、ひとつひとつを丹念に読み込んでしまいました。

 古本をよく買う人であれば知っていると思いますが、古本を買うと、このように特別な「おまけ」が付いてくることがあります。お菓子のカスとか、ページの一部が切り抜かれているとか、迷惑なおまけがついてくることもありますが、押し花で作られた栞や、書きかけのメモなど、以前の持ち主の性格を仄めかすような、そのようなおまけが付いてくると、なんとなく嬉しくなってしまいます。

 物ではなくては単なる書き込みのおまけが付いてくることもあります。
 深田久弥の「日本百名山」を買ったときには、「登山済みの山 ○」と、「これから登る山 △」と書いてあって、各ページに印が付いていました。江藤淳の「漱石の時代」の一番最後のページには「まあまあ。引用多し。」と赤ペンで書いてあっておもわず笑ってしまったし、梅原猛の「仏像 心とかたち」の各章の最期には、細かい疑問点や感想が書かれていて、なるほどこんなことを考えるのかと、感心してしまいました。

 遠藤周作の「幻の女」という短編は、古本屋で買った「長い雨」という翻訳小説の裏表紙に書かれていた、前の持ち主の名前と住所、そしてある箇所に引かれた線がもとになって、主人公が前の持ち主である菅原綾子に対して殺人の疑惑を抱き、独自に調査を行なうという物語です。
 お気に入りの遠藤周作の作品はいくつもあるのですが、そのなかでもこの「幻の女」が忘れられないのは、そのような古本の「おまけ」に対して、個人的な思い入れがあるからなのかもしれません。

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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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