03年05月16日(金)

 朝起きたら身体の節々が痛い。頭痛もする。ああ、今度こそ風邪をひいてしまったようだ。お仕事をお休みする連絡をして、リンゴを食べて、風邪薬を飲んで、午後まで眠る。

 午後三時ぐらいに目を覚ますと、とりあえず頭痛は治まっている。ほっと安堵し、横になったまま昨日寝る前に読んでいた岩波版『北村透谷選集』の続きを読む。ぼくが彼のことを知ったのは確か高校生の頃で、はじめは内田春菊の漫画でその存在を知って興味を持ち、図書館で彼の実像と作品を調べた。漠然とした尊敬と畏敬をもって彼の詩を読み、文章を読み、手紙を読んだが、その内容など理解できるはずもなく、歳を経れば少しは理解できるようになるのかとも思ったが、彼の享年を疾うに越えた今でも、やはりわからない。わからないけれど、初めて彼の詩に触れたときから今に至るまで、その文章を読むとなぜか涙が流れてくる。

 北村透谷は、明治二十七年五月十六日、つまり百九年前の今日、芝公園内の自宅の庭で縊死した。享年二十五歳。彼の自殺は、近代日本文学最初の犠牲と云われている。

嗟世に愛情ヨリ優なる者あランヤ、嗟世に愛情より美なる者あらんや、雪の如く白き者は是愛情なり、玉の如く輝く者は是愛情なり、吾纏ふ所の衣は是れ親の愛なり、以て寒を凌ぐ可く、以て社界に歩む可し、吾れ倦む時は友来つて慰諭し、吾れ怒る時は友来つて緩誡す、病あれば訪ひ苦あれば救ふ、此は是れ真の愛情なり、親の愛や、友の愛や、未だ以て真の愛情と認むるに足らず、
(石坂ミナ宛書簡より)

 Loveを初めて愛と訳し、恋愛を日本に輸入したといわれる北村さん。ロマンティシズムは素敵だけど、こんな甘っちょろいことばかり言っているから、これからという時に自殺しちゃうんだよ。なんだか、とても悲しい。

 夜、稽古。鉄割たちも、風邪引きが多い。未だ全員そろって稽古をしたことがないのだけれど、明日は通してできるのだろうか。っていうか、僕がまだセリフを覚えていない。やっべー

 帰宅後、不思議な気持ちになる。なぜか島崎藤村君の言葉、「ラブということはもう私たちはおしまいですね。春も過ぎましたね」を思い出す。部屋が汚すぎて、憂鬱になる。少し走ってこようかな。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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