05年05月24日(火)

 昨日の続きです。

N さきほど、脳はあまり変化しないと言ったが、アイデンティティ、一貫性といったことで考えた場合、あなたにとって脳だけはやはり特別なものなのでしょうか?

M 脳は非常に特別です。すべては脳から生まれてきます。脳こそ、学ぶための機械です。体の他の部分が何かを覚えている、という考え方は間違っています。脳以外の他のすべての部品は入れ換え可能ですが、脳だけは入れ換えることができません。

N 最近アメリカで、死後、脳だけを温存する人々がいるが、このような人々についてどう思いますか?

M 良いアイデアだと思います。人間はもはや魔法的にではなく、機械的に理解できます。我々は人間の神経細胞のネットワークをコンピュータ上に再現したり、人工知能の研究をしています。我々は人間の知識や感覚、気分までも神経細胞のネットワークで生まれると考えているのです。
脳は千億もの神経細胞を持ち、その千倍ものシナプスという小さなコネクションを持ち、そのコネクションの中から人間の心の働きが生まれると考えています。
脳は膨大なコネクションを持つ機械であり、それが心を生み出しています。その上で人間の寿命を延ばすにはいくつかの方法があります。
脳を冷凍保存しておき、将来的に再生させるには、いくつかの方法があります。ひとつは、細胞そのものを修復して、本当に甦らせる。しかしこれは少し難しいでしょう。それよりも確実なのは、脳をスキャンして神経細胞を調べあげ、再現することです。
その他に、寿命自体を延ばすには、DNAの老化の遺伝子を書き換える、などの方法もあります。
最後に、人間の脳の情報をすべて機械にコピーするということが考えられます。それが実現すると寿命はなくなるし、記憶や知識を増やすこともできます。
脳を生物学的にではなく工学的に考えれば、脳を機械に丸ごとコピーし、記憶を増やしたければメモリーを追加するだけということになります。
しかし私は永遠に生きることには意味がないと思っています。なぜなら、永遠に生き続けるとしたら、成長し続けて、物の考え方は変化を続けて、千年もすればまったく別の人間になってしまいます。全く違う人間になってしまうのであれば、長生きする意味がなくなります。それならば、子供や孫に未来を委ねた方が良いと思うのです。

N 不老長寿でないのであれば、死に方という問題が出てきますが、それを含まなければ、自己についての考えということにならないと思うのですが。

M 死に方がその人の人生を反映していると多くの人が考えていますが、それは間違いです。ある意味で、人間も他の動物と同じ様に死を迎えますが、死ぬのは体だけです。人間の場合、その人の思想は、言葉によって他の人に伝えられ、生き続けます。アリストテレスの思想や、彼が生み出した言葉は、現代社会に生き続けています。つまり、文化というものは、人々のつながりによってできますが、人から人へ伝えられて、その人が死んだあとにも生き続けます。
私は、死というものを自然的なものとして受け入れるべきではないと思っています。死は、人間の無限の可能性を制限してしまいます。ユークリッドやアリストテレスは、現代の科学を作りだす能力がありましたが、宗教によってそれができなかったのです。
もし宗教の支配がなければ、現代の科学は500年頃には達していたと思います。
宗教は永遠の生命を約束しておきながら、その支配によって科学の進歩をさまたげ、我々を早死にさせてきました。人々は皆宗教に憤りを感じるべきです。

(明日へ続く)


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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