02年09月12日(木)

 東京芸術大学美術館で開催している『アフガニスタン悠久の歴史展』に行ってきました。

 どうせチャリティー目的のやっつけ美術展なのだろう、などと思いつつあまり期待をせずに足を運んだのですが、なかなかどうして、日本の仏像とは異なる美しさを持つ良い仏像をたくさん拝見することができました。

 西アジアの仏教美術にはほとんど接したことがないぼくではありますが、それでもアフガニスタンの男らしい、あるいは女性らしい仏像群を観ると、おう、ガンダーラ!と思わず叫んでしまいました。
 ぼくは日本の仏像の崇拝者でありますから、このような異国の仏像に対してはついついライバル心をメラメラと燃やしてしまうのですが、展覧会の目玉であるマルロー所有の『弥勒菩薩交脚像』なんかを目の当たりにすると、こりゃ如何にも人を待たせそうな顔していやがる、などと毒づきながらも、その美しさにはすっかり心を奪われてしまいました。悔しいけど、すごくかわいい。
 けれども、ガンダーラで出土したという『仏陀説法図』の浮彫なんかをみると、まるでミケランジェロの『最後の審判』を観たときに感じたような、お父さん的な恐ろしさを感じました。説法図なのですから、悪人を罰しているわけでもないのに、どうして怖いのだろう。
 また、今回の展覧会で拝した仏像のほとんどに関して感じたことでありますが、その表情の中に衆生に対する慈しみを感じることができないのです。確かに美しいし、悟りを開いたのであろうその表情から感じるところは多々あるのですが、少し控えめに俯いた眼の奥には、自分以外の人を見ていないような、全く別の世界を眺めているような冷たさを感じました。うーん。もっとたくさんのガンダーラの仏像を観れば、また別のことを感じるのかな。

 とは言いましても、小さめの菩薩像なんかではすごくかわいいものもたくさんあったりして、なんだかんだですげー楽しんでしまいました。キジル遺跡の壁画だという『飛天図』なんかもとても素敵だったし、敦煌の『宝勝如来図』なんかは、ジュリー・デゥシェーの絵みたいで部屋に飾りたかったです。ポスターにしてくれ。

 アフガニスタンという土地は、最近ではおさわがせのイスラム国家となっていますが、その昔は東西を結ぶシルクロードの中継点として交易に栄えたため、宗教の面では仏教に、美術の面ではギリシャ・ローマ文化に影響を受け、その結果ガンダーラ特有の力強い、あるいは壮麗たる仏像群を造り続けたそうです。ちょっと意外だったのは、アショーカ王なんかはカンダハルにいるギリシア人入植者のために、ギリシア語に翻訳した仏教の教義をその地方に刻ませていたということで、一歩間違えば、カンダハルを中継点として仏教が地中海に伝播していた可能性もあったのかしらなどと思いました。

みろく!

 いつか落ち着いたら行ってみたいな、カンダハル


Sub Content

雑記書手紹介

大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

最近の日記

過去の日記

鉄割アルバトロスケットへの問い合わせはこちらのフォームからお願いします

Latest Update

  • 更新はありません

お知らせ

主催の戌井昭人がこれまで発表してきた作品が単行本で出版されました。

About The Site

このサイトは、Firefox3とIE7以上で確認しています。
このサイトと鉄割アルバトロスケットに関するお問い合わせは、お問い合わせフォームまでお願いします。
現在、リニューアル作業中のため、見苦しい点とか不具合等あると思います。大目にみてください。

User Login

Links