
5:30起床。モーテルを出ようとしたところ、自転車の後ろのタイヤがパンクしている。ここ数日、何度もパンクしているので、チューブを交換しようとしたところ、交換用のチューブにもでかい穴があいていた。チューブと一緒にいれておいたスパナで傷がついてしまったみたい。うーん、困った。新しいチューブを買うまでは、とりあえずこの穴をふさいで自分の心をごまかしておこう。
さて、本日はとうとうグランドキャニオンです。旅行を初めてから一週間を共にすごしたルート66とも、ここでお別れです。これからは別々の道を進むことになるけれど、元気でがんばってね。とルート66くんとお別れをして、本日はすげー谷を目指して64号線を北上します。予想走行距離は110km。頑張っていきましょう。
本日も快晴快晴。喜ばしいことです。この道路がグランドキャニオンに続いているのかと思うと、自然とペダルを回す足も軽やかになります。iPodで落語を聞きながら、急ぐことなく走りつづけます。
途中、ばかでかい送電線の真下を通り過ぎました。きらきらと輝く送電線の真下を通ると、ばりばりびりびりぶりぶりと、大きな音が聞こえてきます。電気が流れる音なのかしら。恐いので、さっさと通り過ぎました。
グランドキャニオンに近づくにつれ、気温が少しずつ下がっていきます。汗をあまりかかないので、水を飲む量も減っています。できるだけ雲の影に隠れないように、先に広がる日なたを目指して走っているのですが、空に広がる雲の速度と進行方向がぼくと同じために、いつまでたっても雲の影から出ることができません。うー寒い。この間までは、すこしでも雲の影に隠れるように走っていたというのに。
途中で見つけたファミリーキャンプ場。場合によってはここで一泊していこうかとも思っていましたが、体力に余裕があるので通り過ぎました。ちょっと楽しそうな場所ではあったのですが。
64号線を走りながら、何度も動物が死んでいるのを目にしました。ほとんどが、車に轢かれた動物の死体です。この道路を走る車は、相当スピードを出しているので、轢いた本人は気付いてすらいないかもしれないですね。道路全体に死臭がただよっていて、ゆるやかに自転車で走っている身には、この匂いは、ちょっとつらい。
首を切られた動物の死体が道路脇に横たわっていました。どう考えても人間の仕業としか思えません。どう考えても、必要に迫られて殺したようには見えません。ひどいことをする人がいるものだ。本当に、ひどいことをする人間が存在するものだ。
しかし、死んでいる動物ばかりではありません。生きている動物もちらほらと姿を現し始めました。かわいいぞ。
うひー!グランドキャニオン国立公園の入口に到着です。遠かったなー!
入場券を購入するために、ゲート前で車と一緒に並ばなくてはなりません。マナーを守って、車が一列に並んでいる後ろに自転車で並びました。若干、他の車からの視線が痛いです。他の車を見ると、恋人同士か家族連ればかり。ひとりで来ている人も、自転車で来ている人もぜーんぜんいません。えへ。
自分の番まであと少しというところで、とつぜん雨が降ってきました。しかも、とんでもない土砂降りです。あっというまにびしょぬれです。若干、他の車からの視線が気にはなりますが、ここまでくるとやけくそになれるもので、この雨を楽しんでいるふりをしました。
雨でびしょびしょになりがら、どうにかチケットを購入します。チケット販売の受付をしていたレンジャーのおばさんは、びしょびしょで、自転車で、小さくて、黄色の服を着て、英語もろくにしゃべれないぼくにびっくりして、「なんでそんなことをするの」と聞いてきました。
入園すると、雨がパタっとやみました。ここからキャンプ場まで、あと5マイルぐらいあります。今日はもうくったくたですよ。さっさと眠りたい。
キャンプ場へ向かう途中、道路の右側の駐車場の先に、信じられないような光景が突然広がりました。なんだあれは。あれがグランドキャニオン??。すげー!!
ようやくMather CampGroundに到着。テントを張っていたら、もう夕方近くになってしまいました。グランドキャニオン探索は明日の楽しみに取っておいて、今日の夕食と、明日の食糧を買いにマーケットプレイスへ。マーケットプレイスは、郊外の大型スーパーマーケット並になんでも揃っていてびっくりです。カップラーメンと、肉と、コーヒーと、スナックと、そんなものを買い揃えました。
テントに戻ると、すっかり夜です。気温は10度以下まで下がり、さすがに短パンではつらくなってきました。どこかで防寒具を買わないといけないかもしれません。
テントの中で寝袋にくるまり、コーヒーを飲みながら本を読んでいると、突然なんともいえない幸福感がわきあがってきました。とりあえずここまで来たという安心感と、達成感。まだまだ先は長いですが、とりあえず今は幸せだ。
ようやく、第一の目的地であるグランドキャニオンに到着です。ここで数日を過ごす予定です。とっても静かで寒い夜を、寝袋の中で楽しみます。
おやすみなさい。
昨日の日記に書くのを忘れていましたが、Seligmanは町もモーテルもハロウィンモード全開でした。他の町はまだここまで盛り上がっていないのですが、どうしてこの町だけ?
朝6時に起きて、さて出発です。キューくんはまだ寝ている模様なので、心の中でさようならを言ってモーテルを後にしました。いやー、それにしても天気が良いね。ぼくは生まれついての晴れ男なわけですが、今回の旅行でも本当に天気に恵まれている。これまでのところは。
本日は、Williamsまでの約70kmの道のりです。相変わらずのぼり坂は続きますが、いつもよりも距離が短いので余裕なものです。
送電線をつなぐ木柱が、まるで十字架のように道路の側に連なっています。道路と一緒に、どこまでもどこまでも。
それにしても、日記上ではアメリカに到着してからまだ一週間経っていないというのに、現実の世界では、この日記を書き始めてからもうすぐ半年が経とうとしているじゃない。七日分の日記を書くのに半年かかったということは、残りの日記を書き終えるのは2009年になってしまいますね。それは困る。すこしペースをあげて行きましょう。
しかしアメリカという国は、本当にでかいよなー。なにもかもがでかい。奥村くんのちんちんぐらいでかい。ちょっと気を抜くとすぐに地平線が現れるし、すぐに一人きりになってしまう。あっ。今自分で書いていて、あの感覚を思い出して泣きそうになった。あの時の感覚。むかつくぐらいに地平線なんですよ。
空も広いし、雲もでかい。ただでさえ小さいぼくは、アメリカにいると完全に***です。アメリカに来て驚いたのが、事前の予想に反して人々がとても親切でやさしかったということなのですが、小さな***が黄色い服来て変な自転車でひーこらいいながら阿呆みたいな坂をのぼっているんですからね、さすがに親切にならざるを得ないのでしょうね。
特にトラブルもなく、Williamに到着。Williamsの標高は6762フィート。本日は400mほどのぼってきたことになります。っていうか、ここ標高2000メートル越えているのね。心なしか、少し気温が下がったような気がします。
最初に目についたモーテルにチェックインすると、なんとインターネットカフェがあるではないですか。カフェと言っても、普通の部屋にパソコンがどーんと置いてあるだけですけど。一週間ぶりのパソコンに心を踊らせながらメールのチェック等を行いました。
シャワーを浴びた後に部屋の鏡で自分の体を見ると、たった一週間でカメダコウキみたいな肉体になってしまってました。顔も腕も日焼けでぼろぼろ。こりゃ男性フェルモン出まくりだな。まいったね。
さすがに一週間も坂道をのぼり続けると、ひざが少々痛み始めました。まだまだ先は長いので、気を付けて行きましょう。
さて。明日はとうとう最初の目的地、グランドキャニオンに到着です。ロスを発って一週間、ようやく観光地らしい観光地に到着だー。
本日も朝五時に起床して、ストレッチをして、自転車の点検をして、ストアで水と食糧を買い込んで、雄叫び(「今日もがんばるぞー!!」)をあげて出発です。さすがに六日目になると、アメリカの空気にもなれてきました。体調もなかなかよい感じ。ちなみにこの旅行では、アミノバイタルプロを大量に持参して、毎日かかさずに飲んでいます。おかげさまで、夜はぐっすり眠れるし、朝はぱっちりと目を覚ますことができます。健康はばっちり!だから、膝がみしみしと音を立てて痛むのはたぶん気のせいでしょう。
本日は、ルート66を北西に進み、Hackberry、Valentine、Truxton、PeachSpringsをすぎて、ロックンロールの町Seligmanまで走る予定です。約140km、若干長めのルートになるので、気合いを入れていきましょう。
アメリカの風景は、どこまでも続きます。
クロッシングレイルロード。とはいうものの、交差する先にみえるのはなーんにもない土と草の大地のみ。この線路を渡る人は、いったいどこへ行くのでしょうね。
九時前に、Hackberryの近くに到着。道路から少し離れた先に、Hackberryの集落がみえます。
ストアを発見。水も食糧も十分にあるので、通り過ぎました。しかし、今こうして改めて写真をみると、なんだか素敵だ。寄っておけばよかったかな?と少し後悔。
Valentineに到着。途中、パッツンパッツンのウェアを着てカーボンのロードバイクに乗っている自転車乗りが、すごいスピードで僕を抜かして行きました。アメリカに来て、まともに自転車に乗っている人に初めて会った!たぶん、Kingmanかどこか、この周辺に住んでいる人なのだろうけど、週末にこの辺を自転車で走ることがきるなんて、羨ましいな。
途中で廃墟を見つけたので、ちょいと立ち寄ってみました。なんなんだろう、これ。なーんにもないところにぽつんと一軒。自宅という感じではないので、公民館かなにかだったのかな。
またまた、何にもないすてきな道路が続きますよ。誰にも邪魔されずに、音楽を大音量で聞きながら、ひゃっほーう!!
道路の脇に、牛や馬たちを囲っている柵があり、カウボーイをちらりほらりと見かけます。カウボーイにカメラを向けるのは失礼かと思ったので、写真を撮るのは控えましたが、きゃつら、マジでカウボーイハットをかぶってましたぜ。
さて、ここで驚くべきことが起こりました。ロサンゼルスを出発して丸六日、自転車乗りといえば、先ほどあったぱっつんぽっつんさんだけだったのに、本日さらに二人の自転車乗りに遭遇したのです。しかも二人とも自転車旅行者!
一人目は、韓国からやってきたキュー君。まだ大学生なのですが、休学をして自転車で世界一周をしているそうです。すげーなー。話を聞いてみると、宿もほとんど野宿で、テントを張っているとのこと。インドへ行って中国を横断して、今はアメリカを横断中。うーん、老いたぼくにはちょっと真似ができませんね。
もうひとりは、ニューヨークからオレゴンまで、自転車で大陸横断をしているおじいさん。まじでおじいさん。こちらも野宿ばりばりで旅行を続けているそうです。おじいちゃーん、静かな老後はどこへいったのさ。毎日モーテルに泊まっているぼくの立場がないじゃない。
ちなみに、最初に出会ったのはキュー君で、目的地が同じだったので、そこまで一緒に走ろうということになり、その途中でおじいちゃんに出会いました。普段の旅行では、あまり友だちを作ったり人に話しかけたりはしないぼくではありますが、さすがに今回の旅行は不安が大きいことと、同じ自転車旅行者という仲間意識から、「もしよかったら一緒に走ろうぜ!」なんてことを提案してしまったりで、お恥ずかしいかぎり。
おじいちゃんとお別れして、キュー君とSeligmanへ向かいます。キューくんの自転車はマウンテンバイクなので、耐久性は高いけどスピードはそれほど出ません。まあ、ゆっくり走るのもたまにはいいか。暗闇も、二人だったら恐くないし。もう夕方だけど、目的地まではあと50kmぐらいだね。でも二人だったらなんにも恐くないさ!
道路の両脇に続く田んぼの向こう側で、ネイティブアメリカンの子供たちが遊んでいます。手を振ると、おもいっきり無視されました。長閑でとてもよい風景です。今日はなんだか、ゆっくりでとても良いなあ。
そんなわけで、夜も遅くにSeligmanに到着。ルート66の町Seligmanです。うわ、ダンスパーティーやってるぞ。CCRを大音量で流してみんなで踊っている!なんだこの町は!
へっとへとの体でどうにかモーテルを見つけてチェックインし(なぜか今日はどこま満室でした)、キュー君と街中のステーキハウスにステーキを食べにいきました。ロンリープラネットに、「Seligman来たらここ行かねえやつは奥村くんのちんちんだぜ」と書いてあったステーキハウスです。せっかくお友だちができたのですから、今日はパンにスパムはさんでケチャップかけたような食事ではなく、良いものを食べたいですからね。
ステーキハウスに入ると、カウボーイハットをかぶった恐そうな人たちがたくさん座っていて、ぼくたちをじろっ!とにらみつけました。わお!こえー!アメリカに来て初めて差別されるかも!と思ったのも束の間、みなさん僕たちの存在なんかすぐに忘れて、仲間たちと談笑を再開しました。ぼくたちも負け時と談笑して、分厚いステーキを食べて、今後のお互いの検討をたたえあって、お別れしました。またどこかで会えるとよいね。
自転車仲間との出会いが嬉しくて気づかなかったけど、今にして思うと、Seligmanってとても面白い町でした。ウエスタンな男の世界って感じ。