
02年04月06日(土)
とても素晴らしい本を発見しました。毎日ムック「鬼平を歩く」という本です。「鬼平をめぐる江戸の四季」や「犯科帳を歩く」など、鬼平犯科帳の舞台となった場所を、現在の東京と照らし合わせて紹介してくれてます。しかし、これだけであれば「鬼平犯科帳お愉しみ読本」でも、かなり丁寧に紹介しているので、それほど興奮はしません。嬉しいのは、「鬼平の愛した食と酒」と、「鬼平好みの味処」で、鬼平犯科帳に登場する食べ物を、原作に忠実に再現していたり、あるいは、そのものを食べさせてくれるお店を紹介してくれてます。これ、マジ嬉しいよ。レシピまでついているのよ。鬼平犯科帳に一番登場する食べ物といえば、多分軍鶏鍋だと思うのですが、軍鶏鍋のおいしいのを食べさせてくれるところも紹介されています。両国にあるのですが、今度鉄割の方々を連れて行ってみようと思います。あるいは、鉄割の方は皆さん鍋を作るのがとても上手なので、どなたかの家で軍鶏鍋を作ってみても良いとは思うのですが。


02年04月05日(金)
久しぶりに吉田健一の「東京の昔」を読み返したのですが、やはり素晴らしいので、ちょっとだけ以下に引用させて頂きます。
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そういうどうでもいいような話をしながら飲んでいるのはおしま婆さんと湯豆腐を突いているのくらいの位楽しかった。そこの店の熱燗というのは酒が通っていく喉が焼けそうな本当の熱燗でまたそうしなければ飲めないほどの辛口でもあったから酔うよりも先にその熱いのと酒が強烈なので却って暫くのうちは改めて目が覚める思いをする按配だった。そしてその店は前に一度来たときも気が付いたことだったが新たに一本持ってきても前の空になった銚子を下げずにいて勘さんの前にも二本そのいかついのが並んでいた。
「こうしておくと何本飲んだか分かるからなんですよ」と勘さんがその町の先輩らしく説明した。
「併し気をつけないとね、この酒は酔います。」
「それで尚更何本飲んだか知っておく必要があるわけですか。」そう言えば前に来たときも初めの感じに似ずかなり酔ってその店から帰ったことを思いだした。これに対抗するには食べるのに限るのでおでんの方は袋にがんもに爆弾を頼んだ。この他にその頃はおでんの種に何があっただろうか。その晩もこの三つを頼んだ覚えがあるのからすればおでんの中でもこういう脂っこいものをいつも頼んでいたらしい。そのおでんも熱くて辛子も飛び切りよく利いた。それに熱燗の酒でそういうものを飲んだり食べたりしていると寒さを忘れるばかりでなくて勘さんが言った通り酔わないでいることの方も危なくなってきた。
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こんな感じで、句読点のあまりない文章が延々と書き連なっていくのですが、これがね、読んでいくうちにどんどんと心にはまっていくのですよ。この引用だけでは分からないかもしれませんが。
食べ物がとても好きな方で、文章の至る所で酒を飲んだり物を食べたりする描写が出てくるのですが、それが素敵でね。友人との会話とかも、たいした会話でなくても、とても魅かれるのです。ああいうのを粋というのかしら。僕も大人になったらこういう生活を送りたいよ。(銚子を下げないで並べていくとかやってみたいね、と以前に誰かに言ったら、本当に粋な人は、その銚子を横にして並べていくのだよ、と教えていただいた記憶があります。誰かは忘れたけど。)
で、何を言いたいのかと言いますと、吉田さんは最近はあまり人気がないようで、本も絶版にはならなくとも重版もされずといった状態ですが、やはり僕はこの人の小説が大好きで、一生読んでいきたいと思いました。
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そういうどうでもいいような話をしながら飲んでいるのはおしま婆さんと湯豆腐を突いているのくらいの位楽しかった。そこの店の熱燗というのは酒が通っていく喉が焼けそうな本当の熱燗でまたそうしなければ飲めないほどの辛口でもあったから酔うよりも先にその熱いのと酒が強烈なので却って暫くのうちは改めて目が覚める思いをする按配だった。そしてその店は前に一度来たときも気が付いたことだったが新たに一本持ってきても前の空になった銚子を下げずにいて勘さんの前にも二本そのいかついのが並んでいた。
「こうしておくと何本飲んだか分かるからなんですよ」と勘さんがその町の先輩らしく説明した。
「併し気をつけないとね、この酒は酔います。」
「それで尚更何本飲んだか知っておく必要があるわけですか。」そう言えば前に来たときも初めの感じに似ずかなり酔ってその店から帰ったことを思いだした。これに対抗するには食べるのに限るのでおでんの方は袋にがんもに爆弾を頼んだ。この他にその頃はおでんの種に何があっただろうか。その晩もこの三つを頼んだ覚えがあるのからすればおでんの中でもこういう脂っこいものをいつも頼んでいたらしい。そのおでんも熱くて辛子も飛び切りよく利いた。それに熱燗の酒でそういうものを飲んだり食べたりしていると寒さを忘れるばかりでなくて勘さんが言った通り酔わないでいることの方も危なくなってきた。
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こんな感じで、句読点のあまりない文章が延々と書き連なっていくのですが、これがね、読んでいくうちにどんどんと心にはまっていくのですよ。この引用だけでは分からないかもしれませんが。
食べ物がとても好きな方で、文章の至る所で酒を飲んだり物を食べたりする描写が出てくるのですが、それが素敵でね。友人との会話とかも、たいした会話でなくても、とても魅かれるのです。ああいうのを粋というのかしら。僕も大人になったらこういう生活を送りたいよ。(銚子を下げないで並べていくとかやってみたいね、と以前に誰かに言ったら、本当に粋な人は、その銚子を横にして並べていくのだよ、と教えていただいた記憶があります。誰かは忘れたけど。)
で、何を言いたいのかと言いますと、吉田さんは最近はあまり人気がないようで、本も絶版にはならなくとも重版もされずといった状態ですが、やはり僕はこの人の小説が大好きで、一生読んでいきたいと思いました。