
講談社の文庫情報誌『IN・POCKET』を読んでいたら、京極夏彦さんが最近文庫になった『絡新婦の理』の原稿を、MacOSXとInDesignを使用してPDFで入校した、という記事が掲載されていました。
京極夏彦さんの作品の場合、現在のOSでは使用できない漢字を多く使用しているため、そのような漢字を使用する場合は自分で作字するそうです。そのためこれまでは、京極さんがワープロでまず漢字を作字し、原稿を印刷会社に送り、同じ漢字を印刷会社でも同様に作字してから、植字、組版し、それを印刷してゲラを出力し、出版社を通して京極さんにゲラを送り、京極さんが校正をし・・という風に煩雑な作業がありました。それが、MacOSXでInDesignを使用した場合、原稿を書いて、作字、組版、校正等すべて作者自身が作者自身の手で行うことができるので、最終的なレイアウトを含む原稿が完成したら、PDFでファイルを出力して、印刷会社に持っていくだけです。
MacOSXは、ご存知のとおりファイルをPDFで出力できるという素晴らしい機能が搭載されていて、これだけでも僕としては感動的なのですが、InDesign等を使用すれば、さらに個人で書籍まで作れてしまうという、非常に実用的な記事でございました。InDesignというアプリケーションは使ったことがないのですが、以前から話のある『鉄割本』を作成するときにちょっくら使ってみたいな、と思いました。
『鉄割本』、作ることは出来るのでしょうが、問題は中身ですね。
■米国人タリバン兵、映画「マルコムX」でイスラム教に心酔=米誌
ぼくの友人にも『マルコムX』を観てイスラム教に心酔した方がいます。彼は、みんなで旅行に行ったときに、次の日に食べようと思って冷蔵庫にいれておいた豚肉を、夜中のうちにたばこの灰をまぶして、ごみ箱の奥底のほうに突っ込んで食えないようにしておりました。一時はあごひげを生やして、一日五回メッカの方角へお祈りを捧げたりしておりましたが、今ではすっかり熱も冷めて、鉄割の脚本なんかを書いていますけど。
映画の力は、すさまじいものです。
■龍安寺の石庭 見ていると自ずと人は快く- 京大研究員ら 認知科学で仕掛け解明
なんなんでしょうね、こういう研究結果を最近よく目にしますけれど、人がなにかを見て心地よさを感じたり、感動したりする原因を認知科学で説明するというのは、どうも抵抗がありまして。
誰かが、映画を観たり絵画を観たりして感動したことを、「理由」を中心に説明しているのを聞くときに感じる違和感に似た感覚というか、恋愛なんかでもそうですけど、その人を愛している「理由」を説明できるうちはまだまだ本当の恋愛ではないのではないか、などと勝手に思っていまして、「〜だから面白い」とか、「〜だから好き」とか、それは好きであったり感動したりした要素のひとつではあっても絶対ではなくて、何かに感動したり愛したりするのは、ちょっと気取らせていただきますと、「魂が魅かれる」ような感覚で、「理由」なんて言葉では表現できるものではないのではないか、と。
ですから、認知科学の重要性は認識しつつも、現代では脳のどの部分をいじれば悲しくなるかとか、怒りだすとか、そんなことまで解明されているということを考えると、逆にそれを越えた感覚の世界の存在を強く夢想してしまいます。脳という檻の中で生きている僕たちは、結局は生物的な物理的法則に則って世界を生きているのかとか悲しくなったりもしますけど、そんな当たり前のことはどうでもよくて、問題なのは認知科学のような「心の原因」の科学の精神が間違って巷間に流布したときのことで、ぼくが何かに感動したり、誰かを愛したりしたときに、その「理由」を得意げに説明するような輩がいたら、指浣腸をしてやります。
けど、このような話は結構好きです。