02年06月19日(水)
映画「フロム・ヘル」の中で、ジョニー・デップが演じる主人公のフレデリック・アバライン主任警部が、阿片を飲んで眠り、予知夢を見るシーンがありますが、このシーンを観たときにぼくが連想したのは、イギリスの詩人コールリッジの「クブラ・カーン」という叙情詩です。

1798年の夏、静養中の農家で、精神の昂ぶりを感じたコールリッジは阿片を飲み、椅子に座り午睡をとっていました。
その三時間の睡眠の中で、彼は不思議な幻想に満ちた夢を見ました。
目覚めた後、先ほど見た夢の残像が頭から離れることのなかったコールリッジは、その幻想を紙に詩として書き始めました。
In Xanadu did Kubla Khan
A stately pleasure-dome decree :
Where Alph, the sacred river, ran
Through caverns measureless to man
Down to a sunless sea.


怱必烈汗(クブラカン)は命じた
上都(Shang-Du⇒Xanadu)に快楽宮を建立せよと。
そこに聖なる川、アルファ川が
人知に及びもしない洞窟を通り
陽光のささない海へと流れ下る。
ところが、途中に来客が訪れてしまい、詩作は中断されます。
客が帰った後に再び詩作を再会しようとしましたが、頭の中の夢の残像は、完全に消えうせてしまっていました。
そしてこの幻想的な詩は、永遠に完成することのない未完の詩となりました。

以下が全文です。
クーブラ・カーン—夢幻—断章(翻訳)
Kubla_Khan(原文)

詩も素敵だけど、エピソードも素敵ね。
コールリッジが椅子に座って昼寝をしている夏の午後を想像してしまいます。
ちなみに、コールリッジは後年アヘン中毒で相当苦しんだそうです。
02年06月18日(火)
映画「フロム・ヘル」の原作であるアラン・ムーアの「From Hell」を読んでみたいとおもってAmazonで調べたのですが、高いので、「Batman : The Killing Joke」を注文しました。
このアラン・ムーアという方は、相当に長いキャリアをお持ちの作家で、日本で言えば梶原一輝のような存在なのかしら。「Watchmen」なんかが有名で、日本語版も出ていますが、翻訳されているのはこの作品だけのようです。
■Salon.com インタビュー
■From Hellの書評(Salon.com)

実は、季刊・本とコンピュータの第二号の「アメリカン・コミック最先端」特集や、今年の初めに出たSTUDIO VOICEの「“アメリカン・オルタナティヴ=コミックス”集成」という特集を読んで以来、アメリカン・オルタナティヴ・コミックスにとても興味が沸いてしまい、書店で見かけては購入をしております。
個人的に好きなのは、クラムはまあいいとして、フィービー・グロックナーや去年「Ghost World」が公開されたダニエル・クローズエイドリアン・トミーエ、日本でもおなじみのジュリー・デュウシェーなどなどが気に入っております。
ちなみに、上記の「本とコンピュータ」では、柴田元幸氏がクリス・ウェアベン・カッチャーを翻訳しています。

多分もっともっと面白いコミックなんかもたくさんあるのでしょうが、現在のところ、手当たり次第読みあさっている段階で、作家の名前もよくわからない状態です。
と言うわけで、調べ調べつつ読んでいるのですが、自分で言うのもなんですが、ここらへんのオルタナティブ・アメリカン・コミックには相当はまると思いますよ。

これから読んでみたい作家は、Peter BaggeCharles BurnsHernandez BrothersJim WoodringDame Darcyなどなど。
この種のアメコミは、池袋のジュンク堂なんかにもある程度は置いてあるのですが、値段が高くなっている($18が3600円とか)から、Amazonとかで買わざるを得ないのが残念です。
02年06月17日(月)
フロム・ヘル」を観ました。

監督は「ポケットいっぱいの涙」のヒューズ兄弟です。1880年代の切り裂きジャックの事件を扱った、アラン・ムーアの「From Hell」というグラフィック・ノベルが原作で、この作品に触発されたヒューム兄弟が、「切り裂きジャックマニア」であるジョニー・デップに出演を依頼、ジョニー・デップは二つ返事でOKしたそうです。

この映画を観終わったときには、これはまたこんな大胆な推理をして、イギリスの王室はよくもまあ黙っていたものだ、などと思ったのですが、この映画で犯人とされている人物の犯人説というのは昔からあったらしく、推理自体はさして真新しいものではないそうです。

映画自体は、全体的に描写がおどろおどろしく、惨殺された死体や、当時の医療技術の残酷さ、王室やフリーメーソンなどがこれでもかと言わんばかりに恐ろしく描かれているのですが、最も心に深く残ったのは娼婦達のモノの食べ方、特に葡萄の食べ方やお酒の飲み方で、この映画を観終えたあとに唯一忘れられなかったのが、それらのシーンでした。
彼女達の葡萄の食べ方というのが、妙に生々しくて、悲しくて、あの時代の背景を、精密に作られた町や家並みや衣装よりもよほど正確に描写していたのではないでしょうか。

映画「フロム・ヘル」と切り裂きジャックに関しての情報は、公式のサイトよりも下のサイトの方が詳しかったです。
■『フロム・ヘル』 From Hell (2001)
■切り裂きジャック Jack The Ripper

この種の映画って、好き嫌いがあると思いますが、なかなか面白い映画でしたよ。評判は悪いけど。
上記のサイトとかで切り裂きジャックに関する知識をある程度身に付けてからこの映画を観ると、相当面白いのではないでしょうか。

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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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