02年05月04日(土)
そんで先日古本屋で、「猫百話」という、ラブレーから村上春樹まで、古今東西の猫に関する文章を集めた本を見つけました。柳瀬尚紀編。ジョイスの翻訳家として有名な方です。

この本、とてもおもしろいのが、作家や芸術家による猫に対する偏愛的な文章を集めているのではなくて、単に猫に言及している文章を集めているのです。
例えば、収録されている一編である河上徹太郎の「吉田健一」では、単に吉田健一と彼の初めての出会いを描いたものです。

見ると猫背で、手頸などにおんなのようなしなを作る青年が、静々とはいって来た。彼の第一印象は、寒がりだということであった。足許にガス・ストーブをかんかんつけたソファーの上で、猫のように頸筋と尾てい骨を同じ角度の抛物線を曲げて蹲り、短くなった煙草を指先を舐めるようにうまそうに吸い、そのままいつまでもうっとり坐って御満悦なのである。

関係ありませんが、なんだかこの部分だけ読むと、ポーの作品みたいですね。この青年が、あとで事件を起こすの。

話を戻します。
この本には、その他、イギリスの民話に登場する猫や、哲学書で例として挙げられている猫、小説でいつの間にか出ていつの間にか消えている猫、ラブレー「ガルガンチュア物語(!)」の、うんこをしたあとに猫でケツを拭いたら引っ掛かれた話、答えが「猫」のなぞなぞを集めたものなど、本当に多彩な猫話が網羅されています。

しかも、バーセルミの(当時は)未訳の作品まで入っている!

猫好きの、猫好きによる、猫好きのための猫偏愛記みたいなものは、正直なところ読んでいると疲れてしまいます。
そんなものを読むよりも、自分で猫をかわいがったほうが楽しいし。

それよりも、この「猫百話」のように、さりげない猫のお話の方が、読んでいて本当におもしろい。
文章に猫が出てくるのなんて当たり前に考えておりましたが、こうしてまとめて読むと、猫と人間の関係、思っていた以上になかなか興味深いものであります。
02年05月03日(金)
猫ついでにもう一つ。

鈴木大拙とは誰か」に以下のような写真と文章が出ています。

眠る


猫が眠る。大拙先生も眠る。猫の眠りが大拙を眠らしめ、大拙の眠りが猫を眠らしめる。
猫は大拙先生を眠り、大拙先生は猫を眠る。ソファーも眠り、机も眠る。共に眠りえるということ。猛虎と眠る寒山を描いた二睡の図が想われる。


猫を飼いたい。

鈴木大拙さんも猫がとても好きだったようで、生徒に輪廻転生について問われて、以下のように応えています。
(参考)

『先生は本当に輪廻転生を信じているか?』と学生から質問されると『わしゃ猫が好きでなあ、ことによったらわしの前世は猫だったかも知れないなあ』と実感で答える。学生はこれを聞いて納得する。理屈以前の世界からおっしゃっているので相手の疑問が消えてしまう。

猫。
02年05月02日(木)
阿弥陀如来信仰では、人は臨終に際して、西方極楽浄土を想い描く事によって成仏を遂げんとすると言いますが、「もしいつか自分にも死ぬ日がきたら、臨終までの数時間は、一生に飼った猫たちのことを、順に思いだして明るいものにしたい」と申したのは大佛次郎でして、彼のこの言葉は僕はとても良く理解できて、もし猫がいなかったら、この世界がどれほど暗澹としてしまうか、考えただけでも恐ろしいものがあります。

猫好きの文学者といえば、先にあげた大佛次郎、「ノラや」の内田百ケン(けんの字がない)、池波正太郎などなど。皆さま、猫に対する愛情たっぷりのエッセイや作品を書いています。
文学と猫というのは、なかなか密接な物なのね。

太陽1997年5月号の「猫と作家の物語」という特集では、作家と猫、文学と猫、芸術家と猫のとてもこころ暖まるお話がたくさん載っています。
ヘミングウェイが飼い猫を銃で射殺した話とか、谷崎潤一郎が偏愛のあまり死んだ飼い猫を剥製にして飾っていたとか。

来世というものがあるかどうか、僕未だこれを知らない。仮にもそれがあるならば、そこにもこの地球のように猫がいてくれなくては困ると思うのである。

大佛次郎のこの一言が、猫好きの本質をついておるのではないでしょうか。

もう、猫飼いたい。飼いたい。飼いたい。

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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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