
05年03月04日(金)

今日はお酒を飲んで良い気分で帰宅して、今はリッキー・リー・ジョーンズを聴きながらゆったりとした気持ちでこの文を書いています。今日のお酒飲みはいつもよりも人数が少なかったので、殊更に楽しかったなあ。お酒を飲むときは、三人か四人、多くても五人ぐらいがちょうどいいですね。
今朝、起床して外が明るかったので窓を開けたら雪が降っていました。家を出て、少し歩くと、まだ誰も人は歩いていないと思われる積雪の上に、一筋の足跡をみつけました。足跡の大きさと歩幅、力の入れ具合、間違いなく猫の足跡です。これが犬であれば、足跡はもっと乱れてるだろうし、この都会では、それ以外の動物であることは考えにくい。猫を飼ったことのある人であれば一目でわかる足跡です。早朝の、まだ雪も降り止まないこの時間に、この寒がりの足跡の主はいったいどこへいったのだろう。この辺り一帯ののら猫たちは、いったいどうやって寒さをしのいでいるのでしょう。考えると、切なくなります。
ぼくの大好きな短篇小説に、堀辰雄の『雪の上の足跡』があります。冬の信濃での、学生とその主の会話形式の短篇です。雪の中を帰ってきた学生が、一筋の動物の足跡を見つけたことを主に報告し、そこから会話はその土地の昔話、チェーホフ、聖書、釈迢空、フランシス・トムソンの話、凡兆の句、そして立原道造の想い出へと次々と展開していきます。大好きなこの短篇小説のことを考えながら、春の雪の中を歩きました。どうか、寒がっている猫がぼくのまえに現れませんようにと、祈りつつ。