03年03月01日(土)

 ここのところ毎日チェックしている唯一のサイトToday in Literatureが面白いので、いろいろと引用をしたいと思っているのですが、11日分までのアーカイブしか参照できないのです。2月10日の記事もとても面白かったのですが、三国志にうつつを抜かしている間に、やはり参照できなくなってしまいました。エドワード・リアさんに関する記事だったのですが。

え

 1846年の2月10日、エドワード・リアのノンセンス本が出版されました。この本は、後に続く四冊の「ノンセンスの絵本」の最初の一冊であり、この本によって彼はルイス・キャロルやヒラリー・ベロックなど、イギリスナンセンス小説の黄金の半世紀における先駆となりました。

え

 リアは、もともとは動物の絵を描く独学の優れた画家でした。二十代で、ダービー伯爵の動物園の鳥の絵を書くことを依頼され、邸宅に住み込みで仕事に従事しました。その四年間の滞在の間、リアはノンセンスな五行詩に挿し絵をそえて、伯爵の孫を楽しませました。そして同時に、息の詰まるようなビクトリア建築に監禁されているかのような、生活への間断のない不安を募らせ続けました。

え

"Nothing I long for half so much as to giggle heartily and hop on one leg down the great gallery -- but I dare not." --Edward Lear

え

 ルイス・キャロルからジョン・レノンまで、後世のさまざまな芸術家に影響を与えたこのエドワード・リアという方。その名前を知らないひとでも、彼の絵は見た事があるのではないでしょうか。検索の鉄人の関裕司さんが始められた「プロジェクト ノンセンス」では、有志の方々の手により、彼の作品が翻訳され、リア本人の挿し絵と共に公開されています。

え

 1837年にイギリスを去った後、リアは続く五十年間の多くをイタリアやギリシャ、インド、エジプトなどを転々と過ごし、その間に放浪に関する旅行記を七冊出版しました。リアに関して書かれている多くのことは、癲癇や喘息、鬱病、混乱性適応障害に苦しむ孤独なひとりもの(二十番目の子供として生まれ、ほとんど親のいない状態で育てられ、性的虐待をうけ、抑圧された同性愛への欲望に苦しみ、などなど)としての彼に重点が置かれ、叔父のように優しい風変わり者という面にはそれほど言及されていません。

え

 彼の書いた詩の中には、彼自身に関するある種自虐的な作品も収められています。最後の十年に書かれた"How Pleasant to Know Mr Lear,"は、'how unpleasant to be Mr Lear,'(Mr.リアであることのやるせなさ)の裏返しの意味なのかもしれません。

え

. . . When he walks in a waterproof white,
The children run after him so!
Calling out, 'He's come out in his night-
Gown, that crazy old Englishman, oh!'
He weeps by the side of the ocean,
He weeps on the top of the hill;
He purchases pancakes and lotion,
And chocolate shrimps from the mill.
He reads but he cannot speak Spanish,
He cannot abide ginger-beer:
Ere the days of his pilgrimage vanish,
How pleasant to know Mr Lear!

え

 個人的な意見ではありますが、ユーモアに隠された悲哀ほどサムイものはありません。これを読むぼくたちは、この詩の裏側にある悲しさを探ったり、へたな感傷を見つけたりしないで、ただ読んで感じた通りに笑えば良いのです。本当におもしろいですから。

 「ノンセンスの絵本」は、こちらでも読めるし、上にも書きましたが「プロジェクト ノンセンス」では有志による日本語訳(これがまた素敵なの)を読むことも出来ます。

 僭越ながら拙訳をひとつ。

すんごいおひげのおじいさん
いわく
「思ったとおりになりそうろう
二羽のふくろう、一羽のめんどり
四羽のひばりに一羽のすずめ
わしのおひげで巣作りだ!」

すんごいおひげ

There was an Old Man with a beard,
Who said, 'It is just as I feared!
Two Owls and a Hen,
Four Larks and a Wren,
Have all built their nests in my beard!'

 この詩の別の方々の訳はこちらで読むことができます。くどいようですけど、本当に面白いので。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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