03年03月14日(金)

 テレビがブッ壊れてしまいました。

 テレビのない生活なんてよゆーだと思っていたのですが、いざ壊れてみると、番組が観れない、DVDが観れない、ビデオが観れない、ゲームが出来ない、とぼくの生活のほとんどの活動が制限されてしまい、思った以上に困迫し、他にすることもなく、漫然と天井を眺めたりしていても時間がもったいないので、本棚から何冊か本を取りだし、少し早めにふとんに入りました。

 まず最初はモンテーニュの『エセー』。去年、全六巻をまとめて買ったものの、まだぱらぱらとしか読んでおらず、それでも時折ページを開くと、まだ見ぬ未知の世界と対峙するような、恐怖にも似た感覚を覚えます。ぼくはこの作品を、一生をかけて読むつもりで購入したので、読みを急がずゆっくりと。途中でギブアップ。次の本へ。

われわれはわれわれの思想を一般的な問題で、すなわち宇宙の原因とか運行とかの、われわれなしでも立派に進行する問題で邪魔している。
「空虚について」より

 アンソニー・ストーの『孤独』。古本屋で買った、改版する前の版です。歴史上の天才たちが、「孤独」というものをどのように扱ったかを論じています。読み始めると、思った以上に面白い。ストーは言います。「人間は生まれつき人間的なものにも非人間的なものにも興味をもつ存在であり、この二面性が人間性の根源となっていることを、私は論じたいと思う」。これは是非とも新訳で読んでみたい。そういうわけで中断。次の本へ。

かつてあなたは、僕が小説に取り組んでいる間、僕のそばに座っていたいと言った。聞いておくれ、もしあなたがそうするならば、僕はまったく書けなくなるだろう。
(カフカが恋人へ送った手紙より)

 音楽なんかをかけてみる。アンディ・パートリッジとハロルド・バッドがコラボレートして作ったアルバム『Through the Hill』。うーん、懐かしい。

 次の本へと移りましょう。結局一号しかでなかった『positive』。第一号の特集は、『ポストモダン小説、ピンチョン以後の作家たち』。この本をもっていることは、ぼくの自慢のひとつです。収録された「ピンチョン以後の作家たち」の作品群の中で、ぼくが特に好きなのはピーター・ケアリーの『デブ連歴史に登場』。なんど読んでも最高。マーク・レイナーの作品も収録されているのですが、今読んでみるとちょっぴり恥ずかしくなってしまうのはぼくだけでしょうか。恥ずかしくなったので次の本へ。

 雨が降ってきたようです。外から、とても良い雨音が聞えます。

 さて、松山巌の『日光』です。この本を手にするだけで、ぼくのからだの震えはとまらなくなります。好きな作品や人に関して何かを語ろうとする時に、ぼくの口から出てくる興ざめな言葉には、我ながら怒りを覚えます。その作品・人が好きであれば好きであるほどむかつきます。ですからぼくは松山巌さんのことを人に話すことはほとんどないのですが、この『日光』という小説を初めて読んだとき、ぼくは残りの人生で他の小説を面白いと感じることはあるのだろうか、と不安になるくらい感動をしました。内容に関しては言わずもがな、ページを開くと、とても良い紙質に、少し紺の入った文字色に完璧な文字幅、行幅の文字列が並んでいて、どきどきしてしまいます。語る術を持たないぼくは、この小説についてなにも語ることができません。

 時計を見ると十二時を過ぎ。寝るにはまだまだ早すぎます。どきどきした心臓を落ちつけるために、岩波文庫版『完訳 千一夜物語』を開きます。全十三巻のこのシリーズ、『エセー』と同様に成仏する前に読み終える予定でございます。本日も、シャハラザードの語りに身を任せ、夢の世界へと旅立ちます。

 ううむ。テレビのない生活も、なかなか楽しい。音楽をこんなにゆっくりと聞くのも久しぶりだし。テレビを直すのは、しばらくやめておこうかしら。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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