03年07月04日(金)

 松本人志の『スーパー一人ごっつ(Vol.3)』にビジュアルコラボレーターとして参加している天明屋尚のサイトをチェック。「ガイジンにありがちな、ステレオタイプの誤解。そんなイメージを逆手にとって、ハチャメチャさ加減を増幅した」という彼の作品群、暴走族やヤンキー、ギャングなどの現代の日本の暴力を象徴するイコンを、伝統的な日本絵画の手法で描かれている。素敵だ。「武闘派絵師」はいかがなものかと思うけど。

 某所で話題になっている笹公人第一歌集『念力家族』を購入。かなりの衝撃を受ける。余計な説明よりも句を。

注射針曲がりてとまどう医者を見る念力少女の笑顔まぶしく
アトランティス時代の記憶蘇る弟の目に涙あふれる
空き地にて巨大な箱から出できたる平賀源内と名乗る男
マンモスの死体をよいしょ引きずった時代の記憶をくすぐる綱引き
雷に打たれし教師スギモトが「われは仏陀!」と叫ぶ夏の日
あの夏の石段の上僕の背を押した少女よどうしてますか
かぐや姫に求婚をした貴公子が生まれ変わってまたふられ地球(てら)

 などなど。頭の中に次々とイメージが浮かんでくる。短歌のことは何もわからないけど、例えば小説であれば、情景のイメージを作るためにかなり詳細なところまで文章が手助けをするが、短歌はイメージだけを瞬時に与えてその後のことは読者に任せ切りのところがよい。句集に収められている一句ごとにイメージが膨らみすぎて、最後まで読み終えるのに小説を読むよりもずっと時間がかかったのは、この句集がぼくにとってとても重要であることを意味する。と思う。どうでもいいけど「イメージ」って馬鹿っぽい言葉だなあ。

 絵画に限らず、芸術作品等に接して一番うんざりするのは、海外の技術を単に日本にもちこんだだけの技術輸入作品。技術とは作品を生み出すものではなく、表現すべき作品から生まれるものだ。技術だけを輸入して、そこから作品を生み出そうとしても、品の悪い模倣技術追従作品が生まれるに過ぎない。日本史上、他に類を見ないような文化的転換を果たしたであろう明治維新において、西洋の文化に触発された日本の芸術家たちが行ったのは、単なる西洋技術の輸入や礼讃ではなく、その技術を用いることによって日本の文化のレベルをより高めるための融合だった。文学における口語体、絵画における遠近法など、西洋では当然であった技術を日本の文化に適用することにより、自分たちの芸術の表現の可能性を広げようとしたのである。極端な国粋文化主義も、単なる他文化の模倣も、そのどちらも真に新しい表現は生み出さない。

 夜、お友達の誕生日会で渋谷のメキシコ料理屋さんへ。まるで涅槃の境地。煩悩を断じて絶対的な静寂に達した状態。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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