03年07月16日(水)

 本屋を徘徊。三浦雅士氏による『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』を購入。村上春樹という作家兼翻訳家と柴田元幸という翻訳家が、どのようにアメリカ文学から影響を受け、お互いに影響を与え合い、現在日本の若い作家たちに影響を与えたか。村上春樹論はあちらこちらで目にするけれど、柴田元幸論は初めて読む。

 三浦雅士氏がある若い作家(柳広司)と話していた折、影響を受けた作家のことを聞くと、「村上龍さん、村上春樹さん、そして柴田元幸さんの翻訳」と答えたという。ポール・オースターやスティーブン・ミルハウザーではなくて、「柴田元幸さんの翻訳」という答えに三浦氏は驚く。影響を受けた作家として、村上春樹と同等に柴田元幸が語られているのだ。八十年代から現在にかけて、村上春樹と柴田元幸は日本文学にとってどのような存在であり、どのような影響を与えてきたのだろうか。

 村上春樹を論じる際に、アメリカ文学の要素を省くことはできない。同様に、柴田元幸を語るときに村上春樹の存在を無視することはできない。『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』は、前半にアメリカ文学の影響を中心とした村上春樹論、後半に柴田元幸論(といってもほとんどインタビュー)、最後に両者にとっての「もうひとつのアメリカ」を論じる。

 前半の村上春樹論では、カーヴァーやブローティガン、サリンジャー、ヴォネガット、オースターなどのアメリカの作家が、彼の作品にどのように影響を与え、どのように類似しているかを論じる。村上春樹論というよりは、六十年代以降のアメリカ文学論のようにも読むこともできる。アメリカ文学を異国の文学ではなく、直接に肌に感じるものとして吸収した村上春樹は、それらの作品から何を読み取り、自身の作品で何を書こうとしているのか。そしてそのような彼の作品が日本文学に与えた影響はどのようなものなのか。

 後半は柴田元幸氏へのインタビューで構成されており、これまであまり語られることのなかった生い立ちから、村上春樹との出会い、初めての翻訳、氏のアメリカ観などに言及している。柴田元幸氏をひとりの作家として見ているファンには必読の内容。「世界はアメリカ化していくしかなくて、食べ物はマクドナルド化し、カフェはスターバックス化していくなかで、僕自身はアメリカ文学におけるマクドナルドなのかと不安になることもちょっとはあるわけですよね。もちろんマクドナルドではないと思いたいわけですが、どうしてマクドナルドではないといえるかといえば、要するに個人の好みと偏見で選んでいるということにつきるのかな

 最後は村上春樹論と柴田元幸論の総括になっている。アメリカ文学に強い影響を受けたこのふたりの作家・翻訳家から見えてくる「もうひとつのアメリカ」とは、いったいどのようなアメリカなのか。じつはぼくは、共感できるかどうかは別として、この最後の二章が一番面白かった。

 全体を通して、小難しいことはほとんど書かれていないのであっという間に通読できる。村上春樹か柴田元幸かアメリカ文学のどれかひとつにでも興味のある人にはおすすめの本。

 夜、渡部さんが冷蔵庫をくれるというので、ぶっ壊れたままになっていた古い冷蔵庫を業者に引き取ってもらう。6600円。たけー。その後、渡部さんが横浜から冷蔵庫を運んでくれた。感謝。

 渡部さんから頂いた冷蔵庫は、普通に使っていたら絶対にぶっ壊れるはずの無いところがぶっ壊れていたりしてとても素敵でした。冷蔵庫の機能としては何の支障もないので、大切に使わせていただきます。ものを冷やすって、こんなに便利なことだったのね。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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