06年10月04日(水)

ミニマートでバナナマフィンとコーヒーの朝食を取っていると、隣接するガソリンスタンドからトラック野郎がやってきて話しかけてきました。よう、ボーイ。お前はいったいどこへ行くつもりだ?ぼくはすこし微笑んで答えます。兄弟、その答えはな、風の中にあるさ。おれの行く場所は、風の中に舞っているんだよ。彼は肩をすくめて、ハブアグッドトリップと言い残して去っていきました。そんな夢を見て、朝五時に起床、シャワーを浴びて、自転車のチェックをして、まだ薄暗いうちにモーテルを出ました。ミニマートでバナナマフィンとコーヒーの朝食をとって、大量の水を購入。

本日は、barstowからneedlesへ向かいます。お店はおろか自動販売機もほとんどないモハベ砂漠が、300km近く続きます。どこまで進めるか分からないけど、とりあえず行けるところまで行きましょう。今日も暑くなりそうです。

昨日に続いて、ひたすらにルート66を進みます。ただひたすらにまっすぐに、まっすぐに。時間が早いせいか、道路が廃れているせいか、通る車はほとんどありません。

これだ。ぼくの求めていた自転車の旅は。まっすぐな道を、どこまでもまっすぐな道を、奥村くんのちんちん(驚異的な長さ)のようなまっすぐに続く道を、いつまで走りつづけるような自転車の旅。

一時間走りつづけても、景色はほとんど変わりません。信号もないし、人もいない。店もないし、音さえもほとんどしません。自転車のタイヤが道路を擦る音と、チェーンが回る音、風の音、そんな静かな音の中を、走る。走る。

二時間後。徐々に、太陽が姿を現してきました。道路の状態が良くなったり悪くなったりするので、タイヤがパンクしないように、気をつけて走ります。

途中、映画『バグダット・カフェ』の舞台になった町を通過しました。バグダット・カフェという名前のカフェが本当に存在するらしいのですが、見付けることができませんでした。まあいいや。まっすぐな道が続いているし。

三時間後。まっすぐな道最高!と叫びながら走り続けます。ときどき通り過ぎるバイクライダーたちは、ほぼ全員ぼくにイエーイと合図を送ってくれます。いいやつらだ。

道路に並走して続いている線路の上を、電車が通過します。進行方向がぼくと同じ時は、「競争だ!」と叫んで猛スピードでペダルを回しますが、勝てるはずがありません。時には負けると分かっている勝負に挑まなくてはならないなんて、男って本当に辛いよな。ところで、アメリカの電車ってすごくかっこいい!

昼前に、Ludlowという町に到着しました。なにもない場所かと思っていたのですが、ミニマートがあり、中では食糧やバーガーが売っていました。今日の分の食糧はすでに購入してあるのですが、念のために水やチョコレートを追加で購入。女性の店員さんに、モハベ砂漠内でキャンプできるような場所はありますか?と聞いたら、「まあ、人が近くに住んでいない場所ならどこでも大丈夫じゃない?さそりとかガラガラ蛇とかコヨーテとかいるから、死ぬかもしれないけど」と言われました。チャリでどこまで行くつもりなのか聞かれたので、目的のコースを教えると、「まじなの?あなたきちがいでしょう」と言われました。(以後、会話A)。

四時間後。あいかわらずまっすぐに道が続きます。いくら走っても全然飽きません。刺激がないことに、とても強い刺激に感じます。少し疲れてきたけど、まだまだ走れます。

五時間後。

六時間後。
飽きた。

七時間後。
なんかむかついてきた。

八時間後。
刺激を、もっと刺激をくれ!爆発とか!なんでもいいから!

太陽の光がとても強くなってきました。いくら水を飲んでも、すぐに喉がからからになります。水は、4リットル近く持ってきたけど、足りないかもしれません。

木陰で一休み。今日はどこまで行こうかしら。

へっとへとになってくったくたになって、最高に疲れている時に、後ろのタイヤがパンクしました。見ると、暑さのせいでタイヤがへろへろになっています。替えのタイヤは持ってきていません。うひゃー、これ大丈夫かな。needlesまで到着できればなんとかなるんだけど、needlesまであと200kmぐらいあるよなー。とりあえず太陽の光を浴びながらチューブのパンクを直して、空気を入れて、再出発します。タイヤがバーストしなければ良いけれど。

モーテル発見!と思ったら、つぶれていました。残念。すぐそばに郵便局(砂漠の郵便局ってなんか素敵)があって、その隣に自動販売機がありました。ペプシコーラを一気飲み!コーラがこんなにおいしいなんて!

Highslide JS
完全に無人のモーテル。不法侵入すれば、一泊ぐらいできそうでしたが、大人なのでそういうことはしませんでした。

さすがに疲れてきたので、この辺でキャンプを張ろうかしらと思っていたら、不思議なものを見つけました。木に、たくさんの靴が吊るされています。なんだこれ。干しているようには見えません。木の下に、大量の靴が落ちているし!ひえーこえー!この辺でキャンプをしたら、呪われそうなので、もう少し先まで進みましょう。

そろそろ本当に疲れてきたので、この辺でキャンプを張ろうかしらと思っていたら、再び不思議なものを発見。石で、字が記されています。なんだこれ。しかも、ずーっと先まで続いている。うーん。神さまでも呼んでいるのかしら。なにかの儀式とかだったら申しわけないので、キャンプをするのはもう少し先にしましょう。

暑い。確実に気温は35度を越えています。40度近いような気がする。10月でこの気温ですから、夏なんかは一体どんなことになっているのだろう。

レストラン発見!と思っていたら、またまたつぶれていました。さっきのモーテルも、このレストランも、フリーウェイができる以前の、ルート66がまだ健在だった頃のものなのかな。

やばい。目がくらくらしてきた。

本日はここまで。道路から少し離れた、人目のつかない場所にテントを張ることにします。ローインパクトを心がけて、今回の旅行初のキャンピングです。大地にキスをして、ペグを打ち込みます。

Highslide JS
この後、もっと日陰にテントを移動しました。それでも暑くてなかなか眠ることができませんでした。

夕方の六時を過ぎても、気温が下がる気配は一向にありません。水がどんどん減っていきます。この水は、明日の分も含まれているので、すこし節約しなくちゃ。

明日は少し早起きをして、すずしいうちに砂漠を抜けてしまいましょう。そういうわけで、熱帯夜の中、おやすみなさい。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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