
03年11月06日(木)

よく行く古本屋さんにて、内田の百けんさんの文庫がまとめて放出されているのを発見。絶版になっている福武や旺文社のものなどは結構な値段がついていて、これらの本をこの店に売った方、ぼくに直接売ってくれれば、この店の買取値の五倍で買ったのにい。仕方がないので『ノラや』だけ買いました。絶版になっていないためか、三百円。
秋の夜長に読みましょうと、ぱらぱらとページをめくってみたところ、いやだなあ、読んだら絶対に泣いてしまいます、これ。本当にいやだ。
ノラは三月二十九日に出て行つたのだから、三月三十日の朝だつたかも知れない、目がさめて、昨夜ノラが帰つて来なかつたと思つた途端、全然予期しなかつた嗚咽がこみ上げ、忽ち自分の意識しない号泣となり、涙は滂沱として枕を濡らした
今となつて思ふに、その時ノラは死んだのだらう。遠隔交感の現象を信ずるも信じないもない。ノラが私の枕辺にお別れに来たに間違ひない