
03年11月19日(水)

保坂和志氏の最新作『書きあぐねている人のための小説入門』を買おうか買うまいか迷っていたのですが、本屋さんでぱらぱらとめくって立ち読みをしたところ、「小説の書き方」のような技術的な小説作法ではなくて、「小説を書くということはそもそもどういうことなのか」という内容のようなので、購入。
保坂氏のデビュー作『プレーンソング』に言及して、内田百けんさんのことが書いてあったので、ちょっと引用します。なるほどと納得。
内田百けんは小説も随筆のような感じだが、随筆もまた小説のような趣き(面白み)がある。随筆の名手と言われているある人から直接聞いた話しによると(個人的な会話だったので、名前は伏せておきます)、随筆やコラムをたくさん書かなければならなかった時期に、お手本として漱石、鴎外、荷風などいろいろな作家を真似てみたことがあったけれど、どれも型が決まっていて、すぐにマンネリに陥ってしまい、自分でも書いていて退屈してしまった。しかし、百けんだけは型らしいものがなく、自由で、いくら真似てもマンネリ化することがなかったと言っているくらいで、内田百けんの文章は何とも説明しがたい魅力に富んでいる。『阿房列車』の面白さは、電車に乗って窓から外を眺めているような、そのまま電車に乗っているような面白さだった。ついでに言えば、外の景色を眺める面白さに、同行者とくだらない話をしたり、駅弁を買って食べる楽しみも織り込まれている。
私のデビュー作『プレーンソング』の直接のヒントは、『阿房列車』のこの雰囲気だった。
夜、鍋島さんと戌井さんと戌井さんのいとこさんと御鮨を食べに。とても久しぶりの御鮨、がつがつ食べてしまいました。とても楽しかったです。いつもいつも、ごちそうさまです。