
03年11月25日(火)

数年前に古本屋さんで100円で購入して、そのまま本棚の奥に埋もれていたジョナサン・キャロルのファンタジーホラー『死者の書』を偶然に発見、読んでみたらすごく面白かった。ラストの二行がすべての伏線の到達点となっている小説なんて、初めて読んだかも。ゴシックホラーってこんなに面白いものだったのね。保坂和志が『書きあぐねている人のための小説入門
』で、小説とストーリーの違いについて「ストーリー・テラーは、結末をまず決めて、それに向かって話を作っていく」というふうに説明していたけれど、まさしく結末に向けての伏線が至る所に張り巡らされていて、読み終えて感嘆。いやあ面白かった。
ところで、主人公であるトーマス・アビイが高校のアメリカ文学の先生であることもあって、物語の至るところに文学的な引用や参照が登場するのですが、そのなかのひとつ、ジェームズ・サーバーの一角獣の話がとても気になって調べてみたところ、全文をWebで読むことができました。短いし、とても面白い(少なくともぼくはこのような話が大好き)ので、ぜひご一読。
『死者の書』はジョナサン・キャロルの処女作で、現在までに彼女の作品は翻訳されているだけでも十冊が出版されているようです。他の作品も読んでみようっと。
本を読むってことは、少なくともぼくにとっては、誰か別の人間の世界に旅をすることなんです。いい本なら居心地はいいし、それでいてその世界で自分に何が起きるのか、角を曲がったところに何が待っているのか、知りたくてたまらなくなる。ひどい本ならニュー・ジャージーのセコーカスを通り抜けてるようなものです—臭いし、どこかよそに行きたいと思うんだけど、旅を始めてしまった以上は、窓を閉めて口で息して通り抜けるしかない『死者の書』より