

戌井さんに借りたデイヴィッド・グーディスの『ピアニストを撃て』読了。最高に面白かった。本当に面白かった。いわゆるパルプノワール系、セリ・ノワールの小説なのですが、始まりからラストまで、セリフも物語の展開もほとんど完璧なぐらい面白かった。話を要約すると、キレると恐いピアニストが、極悪兄弟のいざこざに巻き込まれて雪の中をにげまくるという、コーエン兄弟が映画にしたらとても良いコメディになりそうな物語ですが、笑いなどまったくなく、ハードにボイルドされた物語です。とにかくもう、物語の展開がうますぎてかっこよくて、突然に過去のフラッシュバックなどが挿入されるのですが、それがまた効果的で良くて、ぐいぐい引き込まれます。読み終わった後、気持ちがクールなピアニストになってしまって、実生活に戻るのに少々苦労しました。
このグーディスという作家の存在をぼくはこの小説で初めて知りました。調べてみると全部で20冊の長編小説を書いているのですが、翻訳されているのはこの『ピアニストを撃て(Down There)』と『狼は天使の匂い(Black Friday)』、それからすでに絶版になっている『深夜特捜隊』(Night Squad)と『華麗なる大泥棒』(The Burglars)の四冊だけ。ペーパバックでも良いので、他の作品も読んでみたいです。ちなみに、翻訳者をみると『バイク・ガールと野郎ども
』の訳者である真崎義博
さんでした。この人って本当に面白い小説ばかり訳してますよね。ハヤカワ文庫でもたくさん翻訳しているのに、『森の生活
』なんかも訳しているという、なかなか魅力的な翻訳者さんです。要チェック。
「なにが起こるって?何を言おうとしているんだ?」
「衝突よ」『ピアニストを撃て』より
グーディスの作品は映画化もたくさんされているので、ぜひとも観てみようと思います。とりあえずはトリュフォーの『ピアニストを撃て』を観てみましょう。