

どうやら梅雨が始まったようです。さっさと安吾に入りたいものですが、日々の繁雑な生活に追われる身としては、そういうわけにはいきません。本日も繁雑な私用のために銀座へ行きました。
用事をすませた後、時間があったので、なにか映画でも観ましょうかと銀座をぷらぷら。最初にみつけた映画館で『みなさん、さようなら。』を観ました。映画としては、人によってかなり意見に相違が出る作品だと思います。映画の登場人物たちの人生や行動、主人公であるレミの最後の選択、あるいは全体に漂うスノッブな雰囲気などなど。けれども、ぼくはとても感動しました。
物語は、余命いくばくもない父親レミと、破天荒な父の人生を許すことのできない息子セバスチャンと、その友人たちのお話。しんみりとしたお話かと思いきや、出てくるおじさんはホモとか巨乳好きばかりだし、出てくる女性も元やりまんだったりジャンキーだったり。主人公であるレミも、元は大学の教授ですが、手を出した女生徒は数知れずというやりちんおじさん。大学では歴史学を教え、キリスト教とナチスが大嫌いという素敵なじじいです。レミは、収入は少ないけれど、ワインと映画と書物と女性に囲まれた、とてもうらやましい人生を送ってきました。そして、とてもうらやましい最後を迎えます。
前半は、レミとセバスチャンのやりとりがとても面白く、後半はレミの友人たちとの会話が絶妙です。雑談のひとつで、レミは人生で愛した女性について述べます。初恋の相手はイネス・オルシーニ。ムッチリとした白い太股を持つイタリアの女優。次に愛したのが、フレンチ・ポップスのアイドル、フランソワーズ・アルディ。次が女優のジュリー・クリスティ。その次がテニス・プレイヤーのクリス・エヴァート。そしてバレリーナのカレン・ケイン。頭の中で彼女たちと愛し合い、まあようするにオナニーをして、とても幸せだった、とレミは言います。ああ、なんかいいなあと思いました。そして最後、レミは薄れて行く意識の中で、イネス・オルシーニの映画のワンシーンを思い浮かべます。海に入って行くイネス・オルシーニ。はずかしげにスカートを捲くり上げ、その奥から美しい太股があらわれる。レミが初めてオナニーをした映画のシーンです(たぶん)。ただのえろおやじと言われてしまえばそれまでなのですが、その場面がとても良くて。うう。
ちょっとだけ気になったのは、不治の病(劇中で病名は出てきませんでしたけれど、おそらく癌)におかされているはずのレミが、まるまると太っていてとても健康そうだったこと。それから、レミのために集まってくれた仲間たちにはこれから順にお迎えが来るわけですが、最後のひとりになってしまった方はとても寂しいだろうなとも思いました。それは、いやだなあ。
帰りに、駅の構内から外を眺めると、空は晴れているのに小雨が降っています。雨の降り方がいい感じ。キツネの嫁入り、ってやつですね。