
本当の悪人って現実に存在するのですかねえ。などと最近考えておりまして、知人や友人に恵まれている僕としては、人間はみな心のどこかに優しさを持っているなどと愚かなことを思ってしまうのですが、毎日のニュースを見たり、犯罪史を読んだり、映画なんかを観ていると、笑ってしまうような悪人って出てくるじゃないですか。最近で言えば、池田小学校の宅間守みたいな。「むしゃくしゃしたから殺した」とか、平気で言ってる人。
自分の経験外のことや、理解不能なことを遮断するようなことは極力避けているつもりではありますが、それでもぼくのまわりのこの穏やかな世界と、ブラウン管や紙面、スクリーンを通して見る殺伐とした世界との間には、かなりの乖離がございます。映画や小説はフィクションだから良いとしても、ニュースやノンフィクションなどに関しては、現実に僕の生きている世の中で起こった出来事であるわけですから、よほど報道に偏向がない限り、宅間守のような人間は現実に存在するわけだし、畢竟そのような人間がぼくの身近に存在する可能性もあるということでございます。露見していないだけで。そのようなことは誰でもが感じていることなのでしょうが、ぼくにはその実感がないのです。そして、その実感のなさに危機感を抱いて生きております。
前置きが長くなりましたが、オーストリアの映画『ファニーゲーム』を観ました。湖畔の別荘に遊びに来た家族が、無軌道な若者二人に酷い目に遭わされるという作品でして、いわゆる「救いのない映画」です。ほとんど遊び半分で人を殺してしまう二人の若者の姿は、ひっじょーに不愉快で、怒りよりも悲しみを覚えます。
このような事件は現実的にも世界各国で起こっているわけで、日本でも書くのもおぞましいような若者による殺害事件が何度も報道されています。なんの理由もなしに人を殺してしまう殺人者は、映画の中だけでなく、現実の新聞の中、ニュースの中にも存在しているわけであります。
これ以上の幸せを望みませんから、そのような方々にはぼくの世界に現れて欲しくないと、切に願う次第であります。