
02年10月08日(火)
『阿弥陀堂だより』にこんなシーンがありました。
入院している小百合の元に孝夫がお見舞いに訪れます。孝夫は、病室に置いてある本を手に取り、開きます。本は、プーシキンの詩集で、孝夫は「プーシキンいいよねえ」と言いながら、その一節を朗読します。
悲しい日にはこころをおだやかにたもちなさい。
きっとふたたびよろこびの日がおとずれるから。
このシーンを観たときにぼくが驚いたのは、ちょうど前日の夜中に、突然思い立ってプーシキンの『オネーギン』を本棚の奥底から引っ張り出して読んでいたからでした。単なる偶然の一致なのでしょうが、なんとなく嬉しくなりました。ささやかだけど、このような偶然はとても幸せな気持ちになります。単純でしょ。
プーシキンの『オネーギン』は、気難し屋の詩人と村の娘の恋の物語で、大好きな小説(本来は詩なのかな?)のひとつです。レイフ・ファインズの妹であるマーサ・ファインズによって映画化されています。タチヤーナ役のリヴ・タイラーが死ぬほど良くて、映画自体もとても素敵な映画です。タチヤーナが、レイフ・ファインズ演じるオネーギンに恋文を書くシーンは、何度観ても美しいのです。本当に感動したなあ。やっぱ告白はラブレターっしょ。ああ、もう一度観たくなってきた。
映画の中で朗読されたいた詩を、全編書き上げておきます。
日々のいのちの営みがときにあなたを欺いたとて
悲しみを、またいきどおりを抱いてはいけない。
悲しい日にはこころをおだやかにたもちなさい。
きっとふたたびよろこびの日がおとずれるから。
こころはいつもゆくすえのなかに生きる。
いまあるものはすずろにさびしい思いを呼ぶ。
ひとつの世のなべてのものはつかのまに流れ去る。
流れ去るものはやがてなつかしいものとなる。
夜中に読むと、とても心が安定します。そういう詩がとても好きです。