
レイトショーのみの上映なので、観に行くのをやめようかと思っていたのですが、あるお友達がとても面白かったといっていたので、どうしても観たくなってしまい、トッド・ソロンズ監督の『ストーリーテリング』を観てきました。
まわりの意見などを聞くと、『ハピネス』のほうが好きという方が多いのですが、ぼくは圧倒的に『ストーリーテリング』のほうが面白かったです。観る前に友達とお酒を飲んでいて、気持ちの良い感じで映画館に行ったのですが、オープニングでうつらうつらとしてしまい、それがとても気持ち良く、本編に入ったときにはちゃんと目を覚ましましたが、その後も気持ちの良さだけが続いておりました。そんな状態の時に「フィクション」とタイトルが出て、アメリカの創作学部のお話が始まったので、それだけでもうおかしくておかしくて。さらにピューリッツァ賞を受賞した講師とか、「個人的な意見だけど」を口癖とする辛口の生徒とか、その設定と描き方がこれまたおかしくて、主人公の女の子が来ているTシャツがこれまたおかしくて、なんでしょう、ぼくは以前に小説作法の授業を受けていた経験があるのですが、あの授業の馬鹿馬鹿しさがとても滑稽に描かれていて、もうずっと笑いっぱなしでした。だって、「東海岸で身体障害者のフォークナー」ですよ、小説を書いて友達に見せたら「糖尿病でマラソンしている村上龍」って言われるようなものですよ。「ノンフィクション」の方も、大変面白くて、もうずっと興奮しっぱなしで、実はこの映画を観たのは去年なんですけれど、去年観た映画の中で一番面白かったかもしれません。
トッド・ソロンズという方は、ご存知の通り『ハピネス』の監督さんで、『ストーリーテリング』は第四作目の作品にあたります。処女作が『恐れと不安と憂鬱』、第二作目が『ウェルカム・トゥ・ドールハウス』、そして三作目が『ハピネス』になるのですが、前二作品は聞いたことありませんでした。処女作『恐れと不安と憂鬱』で自ら主演して、ウッディ・アレン気取りだとか、自意識丸出しとか、散々叩かれたソロンずさんは、泣きべそをかいて地元へ引きあげてしまい、以後五年間、映画を撮ることが出来なかったのですが、心機一転、1995年に『ウェルカム・トゥ・ドールハウス』を撮ったところ、サンダンス映画祭でグランプリを受賞、次いで『ハピネス』で一躍注目を浴びて、今ではすっかり売れっ子監督さんのようです。
それから、あまり取り上げられてはいませんが、このソロンズさん、結構な演劇青年らしく、『恐れと不安と憂鬱』はベケット、『ウェルカム・トゥ・ドールハウス』はイプセンの『人形の家』、『ハピネス』はチェーホフの『三人姉妹』に影響を受けて書いたとか。やっぱチェーホフか、今の時代。

それにしても、普通の家庭のお父さんとしてのジョン・グッドマンは強烈でした。でかい。