
04年09月05日(日)

甥と一緒に映画観賞。甥の希望で、『NARUTO〈ナルト〉/大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!』を観に行きました。この種のアニメ映画を観るのは非常に久しぶりで、今も昔も物語の雛型は変わっていないのだなあと感心。
ところでぼくは、甥と接するときは常にポール・オースターの『ムーンパレス
』に登場するビクター伯父さんを意識しています。できれば一緒にいろんな国を発明するゲームをしたり、映画を観に行くのであれば本当は『八十日間世界一周
』などを観に行きたいと思ってるのですが、しかしそうなると、甥が二十歳ぐらいになったときに、クラリネットを組みたて途中に椅子に座ったまま死なくてはなりません。それはちょっといやだ。死なない程度に、ビクター伯父さんを見習っていきたい思います。
しかし『ムーン・パレス』って、本当に良い小説だよなあ。今まで読んできた小説の中で、まちがいなくベスト10に入るぐらい大好きです。
僕は長いあいた浜辺に立って、日の光の最後の一かけらが消え去るのを待った。背後では町がいつもの生活を続け、二十世紀後半のアメリカの、聞き慣れたいろんな音をたてていた。沿岸の曲線を見下ろすと、家々の明りが一つまた一つと灯るのが見えた。やがて、丘の向こうから月が上がった。満月の、焼け石のように丸く黄色い月だった。夜空に上がって良く月に僕はじっと視線を注ぎ、それが闇のなかにみずからの場を見出すまで目を離さなかった。ポール・オースター『ムーン・パレス』