

十月になりました。お庭の彼女にこんにちは。
数年前、ビル・ゲイツが訪問先のブリュッセルでパイを顔面にぶつけられた事件がありました。犯人はパイ・アナーキスト、ノエル・ゴダン率いるチームで、今までに五十人以上の著名人にパイをぶつけてきたパイ投げのプロ集団です。これまでの彼らのパイ投げによる犠牲者は、小説家であるマルグリット・デュラス、映画監督のジャン=リュック・ゴダール、フランスの哲学者であるベルナール・アンリ・レヴィ、映画女優のキャサリン・ドヌーブ、ファッションデザイナーのカール・ラガーフェルト、歌手のケニー・ロジャースなどなど錚々。面白いのはターゲットとなる相手を選ぶときの基準で、ひとつは「Powerful」、ひとつは「Self-Importance」、そして最後のひとつは「Lacking of Humour」。要するに、精力的で自尊心が強くてユーモアのセンスのない野郎はパイでもかぶってろ!ということです。
どうしてこの事件を覚えているのかというと、この「ユーモアの欠如」という基準が気になったからで、常々ユーモアに生きたいとは思っている身ではありますが、うーん、ユーモアに生きるというのは、なかなか大変なことなのです。思うに、ユーモアのセンスというものは、ぼくが誰かに対して示す場合だけではなくて、誰かの行動をぼくが受け止める時にも問われるもので、ユーモアに包まれた発言や行動に対して、そのユーモアの外装をすべて剥ぎ取って意図を判断しようとするのが、Lacking of Humour、けれども、どこからどこまでがユーモアで、どこからどこまでが不謹慎なのか、その境界は非常に微妙なところなので、それを粋に推し量るのが、ユーモアのセンスというもの。
世界のすべてをユーモアに受け止めるには、あまりにも生き難い時代ではありますが、みなさんお元気で。そういうわけで、今月のぼくの生活の目標は、ユーモアに生きるということで。