02年07月11日(木)
HotWired Japanで、暗号ソフトウェアPGPの開発者であるフィル・ジマーマンのインタビューが公開されています。
■フィル・ジマーマン <暗号ソフトウェアPGP開発者> インタビュー──われわれはプライバシーを捨てるべきではない

 僕も含めて、一般にインターネットを使っている人で暗号化を意識している人は少ないのではないでしょうか。
 いきなり暗号とか、プライバシーとか言われてもいまいちピンとこないでしょう。

 ゴルゴ13に『最終暗号』という章があります。誰にも解読することのできない最終暗号を開発したために、アメリカのNSA(国家安全保障局)に命を狙われることになった数学者である佐久シゲルを、ゴルゴ13が援護して最終暗号を開発させる、というお話なのですが、このお話しが結構おそろしい話でして。
 物語の中で、NSAはアメリカ国家の安全を保つために、世界中のあらゆる情報を盗聴、調査します。事件は未然に防がれるものの、そこには個人のプライバシーという考え方は微塵もありません。その情況に不安を抱いた佐久は、最終暗号を開発、公開しようとしますが、そのことを知ったアメリカ政府は、アメリカ大統領を通して日本政府に警告を与えます。慌てた日本政府は佐久を呼び出しますが、佐久は彼らに対して以下のように説明します。
「今はインターネットの時代だが、通信回路を伝送される情報を裸でやりとりしているために、簡単に彼らに盗聴されている・・・もともと、インターネットは、一九六九年、米国防省が核戦争の被害で、破壊が予想される通常の通信システムに代わって、緊急の通信網として作ったものだ。軍事的なものを世界中の人に開放すると彼らが言った時、おかしいと、思うべきだったのだ。」

「一見、自由主義が確立したように思える現代だが、内情はもはや個人にプライバシーは無い。検閲社会が秘密裏に達成されているのだ・・」
 『最終暗号』の中で、佐久シゲルが生みだした暗号の根本となる定理の数式に関しては、以下のようなサイトまであります。
■これが佐久暗号だ!

 これは漫画の中の話ではありますが、あながち作り話というわけでもなくて、上記のジマーマンのインタビューや、(ぼくはまだ読んでいませんが)サイモン・シンの『暗号解読—ロゼッタストーンから量子暗号まで」なんかを読むと、このあたりの事がとてもよくわかるのではないでしょうか。

 『暗号解読』に関しては、浅田彰さんが「暗号の世界を解読する』という書評を書いています(ジマーマンに関してもちょこっとだけ触れています)。
もとより、暗号というのはプロの外交官や軍人の領域に属し、一般人とはほとんど縁のないものだった。その閉ざされた領域で、暗号作成者と暗号解読者の密かで熾烈な戦いが歴史を通じて続いてきたことを、シンは雄弁に物語る。カエサルに遡る換字式暗号(アルファベットを何文字かずらせて置き換える)。頻度分析でそれを打ち破ったアラビアやヨーロッパの解読者たち。複数のアルファベットを組み合わせるというアルベルティ以来のアイディアを発展させ、26個のアルファベットを組み合わせることによって強力な暗号をつくりだしたヴィジュネル。さらにそれを打ち破ったバベッジ(コンピュータの先祖のひとつに数えられる階差機関の発明者でもある彼は、しかし、おそらく機密保持のためにヴィジュネル暗号の解読を公表できなかった)とカシスキー。さまざまな分野で名の知られた人々が暗号という閉ざされた領域で展開するドラマは、実に興味深い。ちなみに、シンは、ヤングやシャンポリオンらの古代文字の解読や、ドイルやポーらの文学における「暗号的想像力」*[1]にも説き及んでおり、この本に文化史的な厚みを加えている。
 ついでにもうひとつ。セアラ・フラナリーの「16歳のセアラが挑んだ世界最強の暗号」は、セアラという16歳の少女が、家族や友人の協力の中でCP法という暗号システムを発見するまでの経緯を描いた本です。暗号システムの入門書としても、少女の青春物語としても、どちらの読み方でも楽しめる本です。
 訳は亀井よし子さん。この方は、最近は「ブリジット・ジョーンズの日記」で有名ですけれど、ぼくの中ではアン・ビーティーの翻訳家というイメージがいまだに強い。

 暗号に対する規制の是非に関しては、とてもデリケートな問題ですし、知識の無いぼくにはなにも言及することはできません。しかし、今後インターネットやパソコンはどんどん家電化するだろうし、それを使う人たちはパソコンに関しての知識がなくても使えようになるでしょう。そうなったときに、それを使う各個人のプライバシーが全部盗聴されているかもしれないという危険性に関しては、心に留めておく必要があるかもしれません。
 ある意味、みんなサトラレみたいになっちゃうかもね。それはそれで楽しいのかな。

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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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