04年05月13日(木)

 調べ物でProject Gutenbergをながめていたところ、H.G.Wellsの『The First Men in the Moon』を発見しました。ぼくが生まれて初めてはまった小説です。ぼくが読んだ時のタイトルは、たしか『月世界旅行』。児童向けに抄訳された版だったのですが、小学校の図書館で借りたその本を、何度も何度も繰りかえして読みました。なんだか不思議な気持ち。読んでみると、自分でもびっくりするぐらい内容を覚えている。たとえば、物語の語り手であるMr. Bedfordが最初にMr. Cavorを描写するシーン。とても好きだった部分なので、少し長めに引用します。

He was a short, round-bodied, thin-legged little man, with a jerky quality in his motions; he had seen fit to clothe his extraordinary mind in a cricket cap, an overcoat, and cycling knickerbockers and stockings. Why he did so I do not know, for he never cycled and he never played cricket. It was a fortuitous concurrence of garments, arising I know not how. He gesticulated with his hands and arms, and jerked his head about and buzzed. He buzzed like something electric. You never heard such buzzing.And ever and again he cleared his throat with a most extraordinary noise.

 「He buzzed like something electric」という部分は確か「彼はぎーぎーという、電気のような変な音を出していた」と訳されていて、子供心に違和感を感じた記憶があります。でも、このCavor氏が夕方にぎーぎーという音を出して散歩をしている場面を想像して、すごくわくわくしたものです。この描写を読んだだけでも、この先どのような面白い物語が展開するのか、期待できるでしょう。

 いろいろと思いだしてきたのですが、たしかこの本があまりにも好きすぎて、図書館からぱくりました。人生最初の窃盗です。これは良くないですね。ぼくのせいで、何人かの読書好きの小学生がこの小説に出逢えなくなってしまったわけですから。反省します。でも確か、卒業するときに返したような気がします。それから、この小説の挿し絵があまりにもかわいくて、何度も真似して模写し、漫画を描きました。人生最初のぱくりです。ぼくは、この小説からいろいろなことを教わったようです。

 せっかく大人になったのですから、今度はぜひとも原文で読んでみたいと思います。かなり時間はかかると思いますけれど。

 夜、スタジオで音楽の演奏を練習しました。ライブだとぐちゃんぐちゃんですが、スタジオだとなかなかいい感じ。その後、久しぶりにお会いした中島君と居酒屋でお酒をいただきました。飲みまくり。食べまくり。

04年05月12日(水)

 戌井さんと内倉君と、雅楽子さんのKiiiiiiiiiのライブに行ってきました。会場は、新宿のレッドクロスとかいうあたらしいライブハウス。会場は満員で死ぬかと思いましたけれど、Kiiiiiiiiiiiiのお二人がかっこよかったので我慢してよかったです。ライブ終了後、次回公演のちらし配り。こういう地道な行為が、いつかは報われる。と思いたい。

 その後、戌と内と大久保の韓国料理屋さんへ。お刺身を肴に、マッコリを死ぬほどいただきました。いつもは寡黙な内倉君も本日はなぜか雄弁で、今度勉蔵に会ったら、ぶっころしてやると息巻いておりました。お酒とは、恐いものです。

04年05月11日(火)

 先週以来、林芙美子さんにすっかりはまってしまい、さっそくに本屋さんで『下駄で歩いた巴里』と『林芙美子随筆集』を購入して読んでみたのですが、これがもう素敵すぎて、うっかり寝る前などに読もうものなら、とても良い夢を見てしまうので、次の日は確実に寝坊をしてしまうほどです。特に『下駄で歩いた巴里』に収録されている隨筆群は、もし身近にこのようなものを書く女性が存在したら、とりあえず求婚をしてしまうだろうというような素敵な文章ばかり。たとえば『文学・旅・その他』は、次のような書き出しで始まります。

年歳三十歳の若さで侘味をもとめる気持ちはおかしい話だけれども、山川の妙を慕い、段々世事を厭じる気持ちである。頃日、私は寒山詩を愛唱している。逃避文学にうつつをぬかしているかたちかもしれない。世に多事の人有り。広く諸の知見を学ぶも、本真の性を識らず。道と転た懸遠なり、若し能く実相を明らかにせば、豈に用って虚願を陳べんや。一念に自心を了せば、仏の知見を開かん。と云うこの詩が好きで、私は多事多才のひとを見ると、意地悪くこの詩を思い出すのだ。私はこの頃、ひまさえあると一人で旅をしている。

 うう、かわいい。かわいすぎる。そういうわけで本日、放置しておいてとんでもないことになってしまった奥歯を治療しに歯医者さんへ、結構な処置を施されることになったのですが、芙美子さんの隨筆を思い出して、歯医者への恐怖を打ち消していたわけです。好きな人がいれば、麻酔の注射もドリルの音も恐くはありません。問題は、この人が五十年以上昔に他界しているということです。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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