03年10月27日(月)

 SWISS WATERは毎日飲むには少々高価なので、少し安めのULIVETOにしてみました。走った後に飲むと、なんでもおいしいのよね。

 岩波から出ている『日本近代思想案内』を購入。最初の数章を読む、面白い。明治の初頭、西洋の文化を積極的に取り込もうとした当時の啓蒙思想家たちが洋書に向かったとき、「個」という概念がなかった彼らの前に現れた「individual」や「individuality」という言葉は、独特の新鮮さと戸惑いを与えたようで、最初は「分タレヌ事」と訳され、西周が「人々」「個々人々」、中村正直が「独自一箇」「各自一己」「人民各箇」、福沢諭吉が「独一個人の気象」と翻訳し、少しずつその概念を明確にしていったそうです。ううむ、これはめちゃ興味があるぞ。

 異なる概念と異なる言語を有する他者・他民族同士の間での翻訳という問題については以前から興味があって、それはこの間お亡くなりになったドナルド・デヴィドソンのradical interpretationなんかを勉強したほうが良いのかもしれませんが、とりあえず、あらゆる概念を西洋と異にする開国直後の日本という文化が、西洋の言語と概念をどのように翻訳し、解釈し、咀嚼し、導入してきたのか、それを知りたいと思い、丸山真男・加藤周一共著『翻訳と日本の近代』を購入いたしました。これまた面白そう。

 夜、今週の土曜日の武蔵大学の学園祭で簡単な演目を行うというので、稽古場へ。その後、居酒屋へ。戌井さんは『8人の女』を観て眠り、内倉君は『まぼろし』がとてもつまらなかったらしく、本当にこの野郎どもとは趣味が合わないことをあらためて実感、仕方がないのでクンニの話などをしたところ、話が合いまくり、さらにうんこの話をしたところ、大盛りあがりましたので、めでたしめでたし。

 帰宅後、『X-MEN』と『X-MEN2』を連続で観賞。ううむ、まさしく猫目小僧だ。このような映画を、現在のアメリカの子どもたちは、どのような気持ちで観ているのだろう。

03年10月26日(日)

 昼過ぎ起床、本日は何も予定がないので読書を三昧いたしましょう。

 先にも書きましたが、ここのところずっと西田幾多郎の『善の研究』を一日に数ページという遅読しておりまして、併せて西田哲学に関連する書籍などにも目を通し、理解の助けにしようと思っているのですが、西田哲学を知ろうとすれば京都学派を無視するわけには行かず、調べるうちに田辺哲学というものにも興味がわき、田辺元という哲学者に関連する書籍などを探すも、本人の全集すらなかなか見つからない始末。それで思い出したのが、以前に読んだ保坂和志氏と中沢新一氏の対談で、中沢氏がちょうど田辺哲学を論じた書籍を上梓したばかりで、保坂氏の哲学と田辺哲学を比較していたように記憶していたので、調べてみるとやはり中沢新一著『フィロソフィア・ヤポニカ』という田辺哲学と西田哲学を扱った書籍がありました。即買い。

 フランソワ・オゾン監督の『まぼろし』を観ました。主人公は、シャーロット・ランプリング演じる大学教授のマリー。冒頭、とても印象的な海のシーン。夫婦で訪れた先の海岸で、夫は突然に彼の肉体と共にその存在を消してしまう。その後に描かれるのはマリーのあまりにも危うい精神の状態、存在を失ってしまった夫のまぼろしを相手に、彼女は現実を忘れようとします。

 人が愛する人を失う場合、例えばそれが不慮の事故や病気によって亡くなったのであれば、埋葬という儀式によってその現実を理解し、乗り越えることができるかもしれないし、あるいは別れによって相手が自分の前から姿を消したのであれば、時間が忘れさせてくれるかもしれない(もちろんそれはとてつもなく長く、とてつもなく辛い時間になるだろうけれど)し、あるいはまた別の恋人を作ることによって忘れることができるかもしれません。『まぼろし』の主人公であるマリーは、この両方の可能性を抱いたまま、突然愛する人が自分の前から消えてしまったという現実だけが残った状態で、ひとりで生活をすることを強いられます。昨日までは一緒にいて、明日からも一緒にいるはずだった夫の存在が、ある日を境に突然消えてしまう。彼女にとっての不幸は、夫がいなくなったことでも、夫を喪失したことでもなく、夫の死体が存在しないこと、あるいは夫が失踪したという証拠がないこと。それは同時に救いなのかもしれないけれど、彼女は夫の記憶を思い出にすることも、あるいは忘れることもできないまま、ただまぼろしと会話し、まぼろしと共に生きる。

 印象的なシーンはあまりにもたくさんありすぎて、そのすべてを挙げることはできませんが、特に好きなのは、マリーが大学の講義で朗読をするシーン。彼女が読むのは、ヴァージニア・ウルフの『波』。シャーロット・ランプリングの美しい朗読が、とても哀しい。(知られていることですが、ウルフは1941年に入水自殺をしています)

 この監督の作品はまだ二作(『8人の女たち』)しかみていないし、その二作とも作風が異なるのでなんともいえないけれど、『まぼろし』のDVDに特典として収録されていた短編(これがまた良かった)なども併せてを観て思ったのは、ぼくはこの人の作品の映像の質感(『まぼろし』は前半は35ミリ、後半がスーパー16で撮られているらしい)がとても好きで、風景の切り取り方も、登場人物のセリフも動きも、すべてが完ぺきに近いほどにぼくの好みにフィットしているということで、この監督の作品を他にも観てみたいです。

03年10月25日(土)

 英国図書館のサイトが、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』の初版と第2版の全文を公開したそうです。ちなみにCaxtonというのは、William Caxtonというイギリスで最初に印刷を始めた方のことで、今回公開されている『カンタベリー物語』は彼によって印刷された版だそうです。

 クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル』をさっそく観てきました。映画の中で描かれている日本は、監督が青春時代にメディアを通して知った夢の日本の姿とのこと。いやー、おもしろかった。毎度のことながら、ルーシー・リュー最高。栗山千明もとても良かった。千葉真一、あそこまで素敵な演技をするとは思いませんでした。もう一回観に行っちゃおう。ちなみに、観賞後にトイレに行ったところ、映画の内容に激怒している二人の若者がおりました。

 種類は全然違うけれども、自分の好きな映画をパロディ的にオマージュしてしまったという点で、『8人の女たち』に通じる監督の映画への愛を感じました。両作品ともに、オマージュしている映画のことは何も知らないのですけれど、ぼく。


Sub Content

雑記書手紹介

大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

最近の日記

過去の日記

鉄割アルバトロスケットへの問い合わせはこちらのフォームからお願いします

Latest Update

  • 更新はありません

お知らせ

主催の戌井昭人がこれまで発表してきた作品が単行本で出版されました。

About The Site

このサイトは、Firefox3とIE7以上で確認しています。
このサイトと鉄割アルバトロスケットに関するお問い合わせは、お問い合わせフォームまでお願いします。
現在、リニューアル作業中のため、見苦しい点とか不具合等あると思います。大目にみてください。

User Login

Links