03年09月13日(土)

 さて、そろそろ第三回鉄割山岳隊で登る山を決定しなくてはいけません。今回のメンバーは、前回の倍の六人です。ぼくとしては、全身の筋肉が痙攣して骨が砕け散るような登山をしてみたいのですが、今回は緩やかに山小屋でお酒と談笑を楽しみたいという隊員たちの希望もありまして、温泉もたくさんある八ケ岳なんかがよろしいのではないかと思っております。

 そんでヤマケイJOYなんかを参考にして登山計画を立てて見ました。っていうか、今号のヤマケイJOYがちょうど八ケ岳特集だったので、そのままプランをいただきました。

午前三時、集合。
調布ICから中央自動車道に乗り、諏訪ICで降りて(5050円)、美濃戸口へ。

一日目(5時間20分)
美濃戸口 --(1:00)-- 美濃戸山荘 --(2:00)-- 赤岳鉱泉 --(2:00)-- 硫黄岳(2760)--(0:20)-- 硫黄岳山荘

硫黄岳山荘で一泊(8500円)

二日目(7時間)
黄岳山荘 --(0:30)-- 横岳(2829) --(0:50)-- 赤岳展望荘 --(1:50)-- 赤岳(2899) --(0:40)-- 阿弥陀岳(2805) --(0:20)-- 行者小屋--(0:30)-- 赤岳鉱泉 --(1:30)-- 美濃戸山荘 --(0:50)--美濃戸口

諏訪ICから帰宅(5050円)

高速代とガソリン代は頭割り(ひとり2500円から3500円)
山小屋は7500円(二食付)

 行き、帰りともに時間は余裕を持って計算していますので、実際にはもう少し早く行けると思います。二日目は、体調が優れない人は、来た道を逆戻りして赤岳鉱泉で待機していてもらって、行ける人(大根田・戌井など)だけで赤岳と阿弥陀岳を経由して赤岳鉱泉に戻ろうと思います。実際のところ、横岳から阿弥陀岳にかけては上級者コースに指定されることも少なくなく、鎖場なども多く、結構な難所らしいのですが、もちろんそんなことは隊員の奴らには伝えません。馬鹿だから、こっちこっちと言っておけば付いてきますから。せっかく八ケ岳に行くのですから、赤岳は登りたいし。もしも全員で行ける場合は、赤岳鉱泉には戻らないで、行者小屋からそのまま美濃戸荘へ戻ろうと思います(1:40)。

 それにしても、隊員の野郎どもはきちんとトレーニングをしているのか、非常に不安です。山をなめていると、山に殺されます。今からでも遅くないので、スクワット一日120回と昇降運動30分を膝を痛めない程度にやっておいてください。

03年09月12日(金)

 鈴木大拙師の『一禅者の思索』を読んでいたら、次のような文章がありました。

達磨さんの弟子に慧可といって、あの臂を断ったという有名な人がある。これを禅宗の第二祖とする。この人が達磨さんを尋ねた事柄は何であったかというと、安心をしたいというのだ。別に神や仏のご利益を受けたいとか、生活上に安楽を貪りたいとかいうのではなくて、その心の安らかならんことを願うた。安らかなことというのは、その心に畏れのないことだ。

 ああ、いいなあ。すごくいい。たしか大宰だと思いますが、一日のうちに十五分でも何の不安もない安心のできる時間があれば、それは幸せ日だ、というようなことを言っていたと思いますが(うろ覚えなので確信はありません)、慧可さんが臂を断ってまでも得たいと思ったのが、悟りではなくては安心であったということろが、すごくいい。

 ついでにもひとつ。

仏教は必ずしも神にすがらぬ。天地創造の神は、あったも、なくても、必ずしもその心を煩わさぬ、ひたすらに安心せんことを求める。ここに東洋の宗教的修養の目標が西洋のと違っていることを示している。東洋は内を見る、西洋は外に動く。動く者は、秩序と論理とに優る。見るものは、透徹と直観と円融とに秀ずる。

 すごい極論に読めなくもありませんが、兎も角も、ぼくには透徹も直観も円融もなく、ただこのように本を読んで無窮に幸せを感じることが、なによりも安心です。

03年09月11日(木)

 以前にも少しだけ触れたチャック・パラニュークの『インヴィジブル・モンスターズ 』という小説で、主人公である女性は、交通事故で顔の下半分を失ってしまいます。彼女が事故の後に始めて病院から出た時のことが、以下のように語られています。

 わたしが人々を見ると、見えるのは人々の後頭部だけだ。超ハイスピード振り返っても、見えるのは向こうを向きかけている人々の耳だけだ。そして人々は神と何やら小声で話をしている。
「驚いたな」人々は言う。「いまの人、みた?」
または、「あれ、お面だよね?いやはや、ハロウィーンにはちと早すぎないか」
 誰もが<フレンチズ・マスタード>や<ライス・ア・ローニ>のラベルを読むのに没頭している。  だからわたしは七面鳥を取る。
 理由はわからない。わたしは一セントも持っていない。それなのに七面鳥を取る。冷凍七面鳥の山をかき回す。冷凍庫に詰まった肉色の氷の塊をかき回す。一番大きな七面鳥が見つかるまでかき回し、黄色いビニールネットに包まれた七面鳥を、赤ん坊を抱き上げるみたいに抱き上げる。
 重い荷物を抱えて店の裏側に向かう。レジの真ん前を通る。誰も呼び止めない。誰もこっちを見ていない。隠された金塊でも探すみたいに、タブロイド紙を一心に読んでいる。
「Sejgfn di ofo utnbg」わたしは言う。「Nnei wucj iswisn sdnsud」
 誰もこっちを見ない。
「ふひはへん」わたしは精一杯の腹話術で言う。
 誰一人しゃべってもいない。たぶん、レジ係だけがしゃべっている。身分証明書を二種類見せていただけますか。小切手で支払おうとしている客にそう尋ねている。
「Fgjrn jufnv si vuv」わたしは言う。「Xidi cniwuw sis sacnc!」
 そのときだ。そのとき、一人の男の子が言う。「見て!」
 見ていない、しゃべっていない人々が息を殺す。
 男の子が言う。「見て、ママ。あそこ!あのモンスター、お店のものを盗もうとしている!」

 この小説はもちろんフィクションですが、ぼくはこれを読んでJacqueline Saburidoさんのことを思い出しました。飲酒運転追放のキャンペーン等で有名なので、ご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、1999年の終わり、Jacquelineさんは友人ふたりとドライブの途中、泥酔した十七歳の少年の運転する車に衝突され、全身に大やけどを負いました。友人二人は即死、Jacquelineは奇跡的に助かりました。けれども、彼女が意識を取り戻したとき、彼女は以前の彼女ではなくなっていました。

 以下のサイトで、事故に遭う以前と以後の彼女の写真を見ることができます。非常に衝撃的な写真ですが、飲酒運転の恐ろしさを知るためにも、懸命に戦っている彼女の姿を知るためにも、是非とも多くの人に見て欲しいと思います。でも本当に衝撃的なので、そのつもりで。

■Don't drink & drive

 以下のサイトでは、彼女の生い立ちから事故後の経過までを読むことができます。

■Jacqueline And Amadeo: CHASING HOPE

 この記事の冒頭は、次のように始まります。

どこにいても、子どもたちは見ようとする。振り返って、彼女を見ようとする。
叫び出す子供がいれば、母親に尋ねる子供もいる。付いてくる子供も、隠れてしまう子供もいる。
あるスーパーマーケットでは、男の子が寄ってきて、こう言った。
「化け物」
もっと最悪なのは、子どもたちが泣き出すことだ。
「わたしの心は、普通の人と同じように感じるの」ジャックリーン・サブリドは言う。

 ちなみに断っておきますが、『インヴィジブル・モンスターズ』が出版されたのはこの事件よりも前ですし、書かれたのはもっとずっと以前(パラニューク氏の処女作)なので、彼がこのJacquelineさんの事件を参考にしたということはありえません。事故でひどい外傷を負った、という点以外は特に共通点もないし。それはともかくとして、自らを飲酒運転の恐ろしさの象徴として世間に訴えかける彼女の勇気に敬意を表して、飲んだら乗るな、飲むなら乗るな。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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