03年04月01日(火)

 一度は作る気万々だった鉄割本も、そんなものは必要ないという陰の声を聞いたせいですっかりやる気を失ってしまい、だったらもう何もしねーよと半分きれているのですが、それでも本屋なんかに行って手ごろな雑誌なんかを手にすると、これぐらいの本を作ったらいくらぐらいかかるかしらとついつい考えてしまいます。そんな折、ぼくの中で構想していた鉄割本に一番近い構成の雑誌を発見しました。雑誌の名前は『超世代文芸クォリティマガジン[エンタクシー]』。創刊第一号らしく、柳美里、福田和也、坪内祐三、リリー・フランキー責任編集ですって。この癖の強い四人の方々に関しては、人それぞれ好みがあるとは思いますが、内容は読みごたえたっぷり、500円という値段もお手ごろです。最近の雑誌ってすぐに800円とかするじゃないですか、それを考えるとこの値段でこの内容というのは、お得ではないかと思ったり。

 そんで読み進めていくと、坪内祐三氏が安原顯氏について書いているエッセイがありました。にもちょいと書きましたけれど、先程亡くなられた安原氏と坪内氏は、以前にちょっとしたもめごとを起こしておりまして、安原氏が亡くなられた時に坪内氏の反応なんかが野次馬的に気になったりしていたのですが、さすがは坪内さん、死んだからと言って容赦しません、びしばしと安原さんのことを批判しております。「私は死をもってその人を赦すことをしない」「私は氏から『愛の鞭』も『励まし』も受けなかった。私が受けたのは(中略)嫉妬による言いがかりである」「安原氏が他人をいきなり罵倒するのは、自分の駒だと思っていたはずの筆者が、その思い通りに動かなくなった時だ」などなど。うわー、まじぎれだよ!こえー!こえーよ!死んだのだから赦してやればいいじゃん、というのは意志の弱いぼくの意見に過ぎず、このような対象(人、作品)に対する真摯な態度があるからこそ、坪内祐三氏の評論は力強く、読む人に響くのでありましょう。ぼく、多分、坪内祐三氏の著書って全部読んでるよ、ファンですから。あ、最近出た『雑読系』はまだ読んでないか。

 でも、もし安原氏ともめごとがなかったら、ここまで氏を非難したかな、とも思います。結局は、けんかを売られたから氏の性格や行為を非難しているのではないかしら、などと。

03年03月31日(月)

 去年に定年退職をした父は、日々の暮らしを持て余しているのか、久しぶりに実家に帰ったところ、不思議な竹細工の手工芸品がところせましと並べられており、これはなにかと尋ねたところ、「うけ」だ、という答えが返ってきました。「うけ」とはなにかと尋ねると、父は半笑いで「そんなこともしらないのか、川でどじょうを捕まえるもののだ」と得意げで、さらに詳しく聞いたところ、どこぞで見かけた「うけ」を見様見まねで作り始めたところ、一度はまるとやめられないのはやはり血筋なのか、製作が止まらなくなったとこのこと。軽く数えただけでも三十個以上あり、いったい何匹どじょうを捕まえる気だと聞くと、どじょうなどは捕まえない、これはインテリアなのだとのお答え。店先などに「うけ」を置くと、お客様を捕まえることができるらしい。「おまえの劇団も客がこないのだったらこれを受付に置け」などという申し出は丁重にお断りしたのですが、我が父ながら手先の器用さは相当なもので、電気の通っていないものなら何でも作れると豪語するだけあって、うけの出来もなかなかのもの、近所の方々にも配ってみたところ、あながちお世辞とも思えない称賛を受けたらしく、ご満悦の様子でした。

 夜、スパイク・リーの『ラストゲーム』の吹き替え版を借りてきて父と観ました。父はうけを作りながら観ておりました。映画は相当に面白かったのですが、父と息子の絆の映画を実父と観るのはやはり気恥ずかしく、観終えた後、微妙な気まずさが漂いました。

 そんな父も、明日から新しいお仕事が始めるそうです。一年間の休養で十分に充電した様子なので、ばりばりと働いていただきたいものです。不肖の息子は東京でのんべんだらりんと。

03年03月30日(日)

 春の日和に誘われて、奥多摩方面の電車に乗りそうになる誘惑に抗しつつ、どうにかこうにか乗り込んだ列車は、休日の午前中にもかかわらずがらがらでした。みんなお花見に行ってしまったのかしら。いちばん後ろの車両に行くと、八人掛けのイスの両側に三人ずつ、お相撲さんが座っています。あら素敵。とても良い感じに肥えている。ああまさしくファット。よく見るとファットはみんな若くて、どうも見習いお相撲さんっぽい。ああ、我慢できません。ファットたちの座っている座席の一番左端、どうにか一人分ぐらい開いているイスに座ってみました。

 ファットのみなさん、ファットだけあって全員が居眠りしております。ううむ、ファット。居眠りしながら内股を掻いたりして、まさしくファット。ぼくはスモールなので、こうしてファットに紛れても彼らの仲間には見えないでしょうが、もしかしたら彼らのマネージャーなんかに見えたりするのかしら、と考えたら嬉しくなってしまいました。うわ!ファットの左手が触れたよ。ぷよぷよしてるよ。嬉しくてにやにやしていたら、いつの間にかぼくも眠ってしまい、素敵なファッツに囲まれた夢を見ました。

 しばらくして目を覚ますと、ファッツはいなくなっていました。あれは夢だったのかしらと思っていると、目の前でぶさいくな女子小学生が踊りながらアイドルの歌らしきものを歌っています。なんだこのぶすと思って聞いていると、歌も上手いし踊りも上手で、ぶさいくなこと意外はなかなか素敵な子でした。しかしなぜ電車の中で歌うのかしら、それはやはりぶさいくだからなのかしら、などと思いながら、再びうたた寝。

 再度目を覚ますと、一時間以上経過しておりました。ずいぶん長いこと眠ったのだなと思って周りを見ると、向かいの座席にヤンキーさんが三人座っていて、ぼくに思いっきりメンチきっています。あれ、ぼく何かしたかしら。寝惚けて三人のことぶん殴ったりしたのかしら。うわーこえー。三人とも見事なぐらいそり込み入ってるし。これ写真撮りてー、天然記念物だろうこれは、などと思いながらもメンチきられちゃってます。こわい、こわいよ。もしかしたら、ぼくのそり込みを見て、同類と勘違いしちゃったのかしら。これは違うのです、天然そり込みなのです、と弁解をしようと思っていたら、停車駅で三人は降りてしまいました。降りるときも降りてからも、ずーっとぼくにメンチきっています。何年ぶりだろう、メンチきられるのなんて。早く電車発車して。

 そんなこんなで、ようやく実家に到着。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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