
一度は作る気万々だった鉄割本も、そんなものは必要ないという陰の声を聞いたせいですっかりやる気を失ってしまい、だったらもう何もしねーよと半分きれているのですが、それでも本屋なんかに行って手ごろな雑誌なんかを手にすると、これぐらいの本を作ったらいくらぐらいかかるかしらとついつい考えてしまいます。そんな折、ぼくの中で構想していた鉄割本に一番近い構成の雑誌を発見しました。雑誌の名前は『超世代文芸クォリティマガジン[エンタクシー]』。創刊第一号らしく、柳美里、福田和也、坪内祐三、リリー・フランキー責任編集ですって。この癖の強い四人の方々に関しては、人それぞれ好みがあるとは思いますが、内容は読みごたえたっぷり、500円という値段もお手ごろです。最近の雑誌ってすぐに800円とかするじゃないですか、それを考えるとこの値段でこの内容というのは、お得ではないかと思ったり。
そんで読み進めていくと、坪内祐三氏が安原顯氏について書いているエッセイがありました。前にもちょいと書きましたけれど、先程亡くなられた安原氏と坪内氏は、以前にちょっとしたもめごとを起こしておりまして、安原氏が亡くなられた時に坪内氏の反応なんかが野次馬的に気になったりしていたのですが、さすがは坪内さん、死んだからと言って容赦しません、びしばしと安原さんのことを批判しております。「私は死をもってその人を赦すことをしない」「私は氏から『愛の鞭』も『励まし』も受けなかった。私が受けたのは(中略)嫉妬による言いがかりである」「安原氏が他人をいきなり罵倒するのは、自分の駒だと思っていたはずの筆者が、その思い通りに動かなくなった時だ」などなど。うわー、まじぎれだよ!こえー!こえーよ!死んだのだから赦してやればいいじゃん、というのは意志の弱いぼくの意見に過ぎず、このような対象(人、作品)に対する真摯な態度があるからこそ、坪内祐三氏の評論は力強く、読む人に響くのでありましょう。ぼく、多分、坪内祐三氏の著書って全部読んでるよ、ファンですから。あ、最近出た『雑読系』はまだ読んでないか。

でも、もし安原氏ともめごとがなかったら、ここまで氏を非難したかな、とも思います。結局は、けんかを売られたから氏の性格や行為を非難しているのではないかしら、などと。