

今日ののら猫日記。
ぼくの大好きな保坂和志さんの『猫に時間の流れる』という小説に、クロシロというのら猫が登場します。
とにかくわかっていることは、あの野良猫がいきなりパキに襲いかかったことと、顔の上半分が黒で下が白、胴のほとんど全部と脚の上の部分と短めの尻尾が黒で残りの下の部分が白だという外見だけで、ぼくたちはとりあえず「クロ」と呼んだり「クロシロ」と呼んだりすることになった。
写真のこの猫さんは、ここで描写されているクロシロそのものです。まるでこの猫さんを見ながら書かれた文章のようです。とはいえ、『猫に〜』のクロシロは町のボスですけど、この猫はとてもおとなしいのら猫です。子猫です。将来が期待される凛凛しいひげの持ち主です。

以前、ビートルズの『アビイ・ロード』のジャケット写真からポールの手にしているタバコが修正して消されているという事件(?)がありましたが、またもやこんなことが。
サルトル先生の手からも、タバコが消されようとしています。
まあ、喫煙者のマナーが悪いから、反タバコ運動がどんどん過激になっていくのかもしれないけど、写真からタバコを消したって、なんの問題の解決にもならないのにね。前にも書きましたが、エロビデオにモザイクを入れるのと同じくらい無意味な行為だと思います。とりあえず、モザイク消してください。
BLUTUSの特集「COFFEE AND CIGARETTES」で、養老孟司さんが良いことを言っています。
あまり知られていないことですが、歴史上、禁煙運動はナチス・ドイツでヒトラーが始めたものが最初です。
とか
当り前のことですが、適当で、アバウトなものを含んだ世界こそが豊かな世界なんです。
とか
ぼくはタバコの将来をまったく悲観していません。文化っていうのはなかなかしぶといもので、消えやしませんよ。もし禁煙運動の人たちが言うように、まったく不要なものなら消えます、それだけのことですよ。
とか
僕は正義を主張する人を信用しない。正義というのは秩序ですからね。秩序は必ず無秩序を排出している、部屋をきれいにした時には、ゴミが必ず出ているんです。
そのことが分かっていれば、徹底的に秩序を立ようなんて思うはずはないんですよ。徹底的にタバコを禁止しようなんて、バカなことを考えるはずはないんですよ。
などなど。まったく同感。
とはいえ、タバコのポイ捨てだけは止めていただきたい。大人なんですから。

それにしても『ビフォア・サンセット』は本当に良い映画でした。一日三回は思い出します。そういうわけで、サントラを購入しました。これで一日に五回は思い出します。ニーナ・シモンの『Just in time』が収録されていないのにはがっくりきましたが、ジュリー・デルピーの歌声が心に響きます。毎朝、うんこしながら聴いています。
先日読んだ『アメリカン・ヒーローの系譜』があまりにも面白かったので、同じ人が1976年に書いた『サーカスが来た!アメリカ大衆文化覚書
』を購入しました。いやー、これも面白い。本当に面白い。
特に興味を魅かれたのが、19世紀に登場したダイムノベルという10セントで売られていた大衆小説のこと。当時の有名人や伝説の人物について、あるいは西部の現状などを面白おかしく、さらにかっこよく書いた小説で、クロケットやバッファロー・ビル、カラミティ・ジェーンなどが、実際の人物像を越えてほとんど伝説化した有名人になったのは、これらの作品が普及したことによるものだそうです。20世紀のパルプフィクションやハードボイルドノベルの先駆けみたいなものだと思うのですが、紹介されているダイムノベルが全部面白そうで、ぜひとも読んでみたい。
ダイムノベルの作者たちは個性の強い人が多いですが、中でも気になったのがネッド・バントラインという人。一ダース以上のペンネームで400編以上のダイム・ノベルを書いたこの人、トム・ソーヤの物語にも、トムの愛読書の作者として登場しています。なにかネタはないかなーと西部を徘徊し、そこで活躍していたウィリアム・コーディー(通称バッファロー・ビル)に目をつけて、彼をモデルにしたダイムノベルを書いて彼を人気者にし、その後は彼を主人公にしてお芝居(サーカス)まで作ってしまい、しまいには自分も出演しています。魅力的。酒を飲みながら禁酒運動の講演を行ったりするかなりふざけた人物であったそうですが、コルト・バントラインスペシャルという拳銃は、この人がワイアット・アープにプレゼントした拳銃なんですって。
ロバート・アルトマンの『ビッグ・アメリカン』という映画は、ネッド・バントラインとバッファロー・ビル、そしてシッティング・ブルの関係を描いた作品だそうです。観てみたいのですが、どのビデオレンタル屋さんに行っても置いていません。