
最近、武田泰淳・百合子夫妻の『新・東海道五十三次』を読みはじめました。夫婦で車で走る東海道の旅。文章は泰淳さんによるものですが、登場する百合子さんが素敵すぎます。電車の中で読むとにやにやしてしまうので、注意が必要。ところでこの本、「東海道」といっても、東海道以外もかなりあちらこちらに寄り道をしているので、どちらかといえば、東海道周辺旅行、という感じですね。
去年の秋頃に、自転車で京都から東京までの東海道を走破したのですが、その前後に『東海道中膝栗毛』を読み、さらに広重の五十三次の浮世絵を観ました。それまで、浮世絵というものをちゃんと観たことがなかったのですが、すごくかっこよいのね、浮世絵。武田さんも「とにかく、安政五年九月六日、六十二歳で病没した広重という画家は、えらい男であった」と書いているし、池波正太郎さんも「広重の木版画の色彩こそ、江戸の色彩だ」と絶賛しています。そうだ、広重の浮世絵のことを調べてみようと思っていて、すっかり忘れていた。
夜、中屋敷で天麩羅とせいろを食べました。蕎麦つゆがしょっぱく感じたのは、まだ体調が戻っていない証拠。
何年かぶりに大風邪をひいてしまい、先週の土曜日から昨日までほとんど動くことができませんでした。日曜日に、風邪が直ったものと勘違いして自転車で20kmも離れた場所に飲みに行ってしまい、帰宅して熱を計ったら三十九度を越えていて、それ以降は昨日まで寝たきりの生活でした。食糧を調達しに外にでると、歩くだけで足の裏が痛くて、まるでゴルゴダの丘を登るキリストの気分。ひとりぐらしの辛さが身にしみます。
熱に苦しみながら、なぜか寝込む直前に観た『サイドウェイ』の夢を何度も観ました。中年男ふたりのワインテイスティングの旅。たしかにとても面白い映画だったけれど、まさか夢にまで出てくるとは思わなかった。見終った直後の感動よりも、あとから感じる余韻の方が楽しめる映画なのかも。どうせ夢に出るなら、『ビフォア・サンセット』の方がよかったなあ。
今週末は天気も良いらしいので、それまでには完治して遊びに出かけられるようにがんばります。しかし、風邪で喉がイガイガのときに食べたいちごのおいしさが忘れられません。

今世紀最大の部屋の掃除をしました。部屋にあるいらないものを捨てて捨てて捨てて捨てて捨てまくりました。
本棚を整理したら、学生の頃に購入した前衛演劇の書籍が山ほどでてきました。今となっては自分でも信じられませんが、その昔のぼくは前衛芸術というものに強く魅かれていたのです。うーん、未来派に関する本以外はぜんぶ古本屋さんに売ってしまおう。過去の自分と決別だ。
夜、部屋があまりにも片付き過ぎたせいか、珍しく眠れません。眠れない時は眠らないに限ります。電気をつけて、シス・ハストヴェットの『目かくし』を読みました。真夜中に音楽をかけずに本を読んでいると、その静けさが下手なBGMよりもずっと気持ちを高揚させます。久しぶりに明け方まで読書。ふと本棚を見たら、心なしか寂しそうに見えて、どきっとしました。