02年05月22日(水)
水木しげるは、「二笑亭主人」の最後で以下のように書いています。
『二笑亭』は人物はともかく建物が面白いのです。その製作者が"精神障害"だからといって、捨ててしまってはいけないのです。
しかし、"精神障害"である製作者が生みだした作品群は、一般的に「アウトサイダー・アート」と呼ばれる芸術分野の一形態として、捨てられるどころか近年急速にその存在が世間に知られつつあります。

アウトサイダー・アートに関してみずのき寮絵画教室主宰代行である谷村 雅弘さんは以下のように定義づけています。
アウトサイダー・アートとは、美術の歴史や決まりごと、流行などには目もくれず、評論家や画商の評価に対しても全く無関心に、自分自身の内側からわき上がる衝動に突き動かされ、創意工夫を凝らして作り出す作品の総称である。ヨーロッパでは約80年の歴史を持ち、フランス現代美術の巨匠:ジャン・デュビュッフェによって“アールブリュット”(加工されていない“生の芸術”と言う意味のフランス語)と命名され、我が国では最近“エイブル・ア−ト”(可能性の芸術)なる造語も生まれている。
ぼくはアウトサイダー・アートに関してはほとんど何も知らないのですが、ぼくの持っているEsquire1993年10月号に、「暴走、アウトサイダーアート」という特集が掲載されており、何人かのアウトサイダーの芸術家たちが紹介されています。
その中で、最も興味深いのが、ヘンリー・ダーガーです。

ヘンリー・ダーガーは、1892年にアメリカ、イリノイ州シカゴに生まれました。
幼いうちに養子に出され、8才でカトリックの洗礼を受け、その後知的障害者と認定され、施設に入ります。
しかし17才の時に施設から逃亡、その後病気で入院する71才まで掃除婦、皿洗いなどをして生計をたて、81才(1973年)でお亡くなりになるまでその生活は続きます。
死後、四十年に渡ってダーガーがひとりで住んでいた彼の部屋から発見されたのは、百を越える挿し絵を含む「非現実の王国、あるいはいわゆる非現実の王国におけるヴィヴィアン・ガールズの物語、あるいはグランデリニアン大戦争、あるいは子供奴隷の反乱に起因するグラムディコ.アビエニアン戦争」と題された全15巻15000ページにのぼる大著でした。

その内容は、奴隷少女たち<ヴィヴィアン・ガールズ>の軍隊が、架空の王国の支配権を強奪した凶悪な奴隷主であるグランデリニアン人と戦うというストーリーが骨子になっている、非現実的な王国物語でした。
幻獣ブレンギグロメニアン・クリーチャーたちが空を飛びかうその王国で、男性器をつけた幼い少女たちが、戦いのなかで拷問、虐殺されていく物語を、ダーガーは19才から71才までの間、ひとり部屋にひきこもり書き続けていたのです。

さすがに15000ページを読む気にはなりませんが、ジョン・マグレガーが書いた「ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で」が邦訳されています。
これはちょっと読んでみたいなあ。でも6500円は高いなあ。

ダーガーに関しては、以下の二つのサイトがとても参考になります。

■ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
作品社から出ている「ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で」でのオフィシャルサイトです。
■Realm of the Unreal: A Page About Henry Darger
アメリカのダーガーのWebサイトです。挿し絵等をみることも出来ます。

そういえば、雑誌「PEN」の次号でも、アウトサイダーアートの特集を行うみたいです。
02年05月21日(火)
奥村君とダンディズムについて話していた折、なにかのきっかけで「二笑亭奇譚」という面白い本があるということを教えて頂きました。

この本は、以前にちくま文庫から出ていたらしいのですが、残念ながら今では絶版となっていて、古本屋で探さないと手に入れることができません。
しかしどうしても「二笑亭」について読みたかったので、Webで調べたところ、水木しげるが「二笑亭主人」という漫画で二笑亭について書いてることを知り、早速「奇ッ怪建築見聞」と「東西奇ッ怪紳士録」を購入しました。

二笑亭の主人の金蔵君です。これまた素敵なお顔。

性格強情金蔵君

水木しげるの書くところによると以下の通りです。

昭和の初め、渡辺金蔵によって建てられた「二笑亭」という建物が深川門前仲町にありました。
その建物は、後に精神病と認定される渡辺金蔵という人間の「修養」を体現するためだけの、決して人の住むことの出来ない建物でした。

渡辺金蔵は、精神病を発症する以前より、性格的に強情なところがあって、己の「修養」の信ずるところであれば、他人の意見に耳を貸さないところがありました。
関東大震災ののち、家族の反対を押し切って、突然長男と次男を連れて世界漫遊の旅に出てしまったこともその性格の頑固さと奔放さを物語っています。
旅行の途中、長男が精神に異常を来たしますが、旅行を中止することなく漫遊を続けます。
この漫遊旅行で一体何処へ行ったのか、何を見てきたのかはこの本には詳しくありません。
ともあれ、帰国した渡辺金蔵は、早速二笑亭の建築に取り掛かり、この後十余年にわたり、実際に住むことが出来ない家「二笑亭」の完成を夢見て、日々己の「修養」を如何に二笑亭に開放するか、そのことだけを考えながら風呂に入り続けます。
和洋合体風呂、ガラス入り節孔窓、ホール左側の浮き彫り、土蔵にある昇れない鉄梯子、遠くにある使えない便所、不思議な階段を上がると、主人直筆の掛け軸「ごくろうなれどもるすばんたのむよだるまさん」、祠入口の口を閉じている新型狛犬、入り口が小さく、入ると壁にナイアガラの写真が貼ってある茶室、などなど。

しかし、建築開始の十数年後に、金蔵が精神病として入院することにより、二笑亭の建築は永遠に中止されます。
そしてその二年後に、金蔵の「修養」の具現的存在である二笑亭は、取り壊しになってしまいましたとさ。

うーん。漫画を読んだら、余計に「二笑亭奇譚」を読みたくなってしまいました。
今度のお休みの日にでも、古本屋巡りをしてこようかな。
02年05月20日(月)
5月20日はフランスの文豪オノレ・ド・バルザックさんの誕生日でございます。

バルザックさんはずんぐりむっくり、もっそもっそと歩き、着ている服はしわしわで、口を開けばお下劣極まりない下ネタ話、あるいは誇大妄想的な法螺話、あるいは尽きることのない自慢話。
そんなバルザックさんでありますが、夜になり部屋に一人きりになると、途端言葉の波が頭に押し寄せ、信じられない集中力で一気に原稿用紙にペンを走らせます。
ことばがことばを生み、生まれたことばが物語を紡ぐ。

そしてお顔もなかなか良い顔をしている。

バルザック君

密かなヅラ疑惑がぼくの中に芽生えております。

バルザックさんの時代、小説家と小説を掲載する新聞社の間では、一行いくらという形で契約が行われていました。
書けば書くほどお金になるわけですから、バルザックさんは書いて書いて売って書いて書いて書きまくり、ケルアックもびっくりというぐらい書きまくり、寝る間を惜しんで書きまくり、書いては書いたで借金しまくり、中間搾取はいやだようと言っては自分で印刷会社を作り、書いて書いて書きまくり、完全なノベルライターマシーンと化して書きまくります。
書けば書くほどお金になるわけですから、情景描写がながーく、ながーくなり、舞台設定もくどーく、くどーくなってしまいます。
眠ってはいけないから、一日に五十杯のコーヒーを飲みまくります。
一杯のコーヒーが200mLとすると、10Lのコーヒーを毎日飲んでいたことになります。

そんな彼の書いたそんな作品に登場する人物は2300人を越え、今なお全世界の人々に読まれつづけているとさ。

ぼくはバルザックを読んだことがありましぇん。

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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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