05年02月01日(火)

 春から東京で暮らすことになったますいさんを迎えて、戌井さん宅で日本酒鍋をしました。鍋に日本酒をぶちこんで、火をつけてアルコールを抜いて、豚肉をしゃぶしゃぶで食した後に、だしのたっぷり出た鍋汁に具材をいれて食べるという、とてもおいしいお鍋です。ぼくのまわりには、おいしいもの知っている人がたくさんいるので、とても助かります。

05年02月02日(水)

 冬はそれほど好きな季節ではないのですが、天気の良い日の早朝の、寒気で澄んだ空気はとても好きです。今日もとても良い天気だ。こんな天気の良い日は、仕事なんかさぼって、どこかの公園を散歩をしたいものです。散歩して、ベンチで読書をして、うたたねなんかをしたり、そして寒さで目を覚ましたら、今日はとても良い一日だと思えるでしょうね。

 でもね、大人は働かなくてはいけないのです。だから想像するだけで満足して、電車に乗るのです。

05年02月03日(木)

 最近はいつでも、外出するときのバックの中に武田夫妻の本をしのばせています。泰淳さんの随筆は『目まいのする散歩』、百合子さんの日記は『日日雑記』。ともに以前に読んでいる作品ですが、読むだけで自分のまわりの世界が少しづつ良いものになっていくような気持ちがする作品は、何度読み返しても良いものです。

ニセモノみたいな見事な満月を、テレビで見ていた。月のへこんだ黒ずんだ場所には、もう全部名前がつけられてしまっているのだそうだ。アメリカがつけたにきまっている。

 三輪山の背後より不可思議の月たてり
 はじめに月と呼びしひとはや(山中智恵子)


わたしは、この歌好きなんだなあ。映画『2001年宇宙の旅』のはじめの方に出てくる、洞窟に住み、まだ体毛が生えていた頃のヒトに戻った気持ちがする。
『日日雑記』より

 断言します。ぼくは死ぬまで武田百合子さんが大好きです。

05年02月05日(土)

 世田谷へ行くときはいつも、西荻窪を経由する感じに、裏道を自転車で走って行くのですが、その途中にとても気になる杉並の通りがあります。ちょうど久我山と三鷹台の間ぐらいのどの駅からも一番離れているあたりの、小さな坂道のある通りなのですが、これといった商店街もなく、古い佇いの家々が並び、うらぶれた感じの神社があるだけ、夜と昼ではまったく異なった印象を受ける素敵な通りです。

 その大好きな裏道の、中でも一番気になるのは、通りの最後にある小さな小屋です。おそらくはこれも神社なのだと思うのですが、あまりにも寂しくて不思議な雰囲気を醸しだしていて近寄りがたく、今だその近くまでは行ったことはありません。いつもその小屋を遠目に見ながら、将来の自分があの中で雨の音に耳を傾けつつ本を読んでいる様などを想像して、にやにやしています。

 厭世的な自分を想像するのって、現実逃避でとても楽しいのです。

05年02月06日(日)

 昨晩は二十時前に就寝、十三時間以上眠りました。中島くんが生首を持って「号外!号外!」と叫びながら走り回っている夢を見て、目覚めはあまり良くありませんでした。

 夜に、かっきんさんのライブへ行きました。会場は、祖師ヶ谷大蔵の素敵なカフェ『Muriwui』です。かっきんさんとは、以前に対バンドなどをしたこともあるのですが、ぼくは毎回そうとうに酔っ払っていたので、かっきんさんの演奏をまともに聞くことができていませんでした(ごめんなさい)。今回改めてかっきんさんの演奏を傾聴して、本当に感動をいたしました。これは、音楽だなあと思いました。一緒に演奏をしているみなさんもすばらしかった。おざわさんがギターを弾いていたのですが、ぼくたちと演奏するときとは、まるで別人の様子。たぶん、別人だったのでしょう。「マイ・ブルー・ヘブン」がとても良かった!

 週末に、好きな友だちと一緒に、こんな素敵なカフェでゆるやかな音楽を演奏できるなんて、うらやましいかぎりです。そんな大人になりかった。ぼくは、ライブハウスの雰囲気よりも、カフェのゆったりとした雰囲気の方が好きなんだ。よ。

05年02月07日(月)

 古本屋さんで桶谷秀昭著『北村透谷』を購入しました。この本は、透谷さんの詩歌を中心にして彼のことを論じています。少しでも彼の世界に近づけるように、中国茶を飲みながら、ゆっくりと読書したいと思います。

 そういえば先日、別の古本屋さんで田中小実昌さんが訳したミステリーを、タイトルがかっこいいという理由で何冊か購入したのですが、そのどれもがシリーズものの第二弾とか第三弾で、いまいち読む気が起きません。シリーズものは頭から読まないと気持ちが悪くて仕方がないのです。ならば買うなと思われるかもしれませんが、それを買ってしまうのが楽しいのです。文句があるならかかってきなさい。

05年02月09日(水)

 ちゃこさんと戌井さんと弟くんと、小沢昭一の唄を聞きに横浜の桜木町へ行ってきました。会場はおじいさんおばあさんだらけ、ぼくたちは確実に最年少です。でも、こういう雰囲気は嫌いではありません。ビールとかきぴーを手に、昭和芸能を堪能しました。

 小沢さんの唄は思いの他素晴らしく、いままでの昭和芸能への否定的な思いが、少し薄らぎました。公演のあとも、小沢さんの東京音頭の「はぁ〜」というかけ声とその佇いが心に残っています。

 その後、そのまま横浜で満州焼きなどをつまみにお酒を飲んで、良い気分でお店を出たら終電ぎりぎりでした。お酒を飲んで良い気分の時に慌てるのは、とても辛いことです。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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