06年10月06日(金)

昨晩は18時に就寝して、本日は朝の4時に起床。準備をして、日の出と共にモーテルを出て、近くのストアでお水と食糧を買い込みます。

昨日にひきつづき、行く先に虹が。虹だ。虹です。うーん、とても良い一日になりそうだ。

本日は、Kingmanまでの約100kmの道を走る予定です。さて、はりきっていきましょう。

ルート66を少しそれて、少しだけ近道をします。平らな田舎道を、まっすぐまっすぐ。

本日走る予定の道は、なんでも相当にscenicらしく、地図の上に「この道まじすげえからマーク」がついています。楽しみだ。

うーん、風景が少しずつ男らしくなっていくなあ。砂漠とはまた違った、ごつごつとした感じがなかなかよいね。

あいかわらず、車はほとんど通りません。信号機も、もちろんありません。ストアももちろん見当たらないし、自動販売機なんて影も形もありません。そりゃそうだ。電線がないのですから。

そしてルート66と再開。お久しぶりです、お手やわらかにと挨拶をして、再び厳しい彼との旅が始まります。東風が、雲をどんどん西へ追いやっていきます。

まるで西部映画のような風景をしばらく進むと、小さな町があらわれました。おやおや、「books」の看板が出ています。ちょいと中に入りたかったのですが、人影がまったくありません。車はあるんですけどね。なんとなく、「テキサス・チェーンソー」を思い出して、恐くなったのでさっさと退散しました。

坂道をひーこらとのぼると、今度は少し大きめのoatmanという町に到着しました。あちらこちらにロバがたむろっています。途中の道がうんこだらけだったのは、こいつらの落し物だったのね。

この町は、100年以上前のゴールデンラッシュ時に作られ、一時期は数千人の人々が生活をしていたこともあるそうです。現在は、観光客のためのドライブインのような場所になっています。ここにたどり着くまでに、車なんてほとんどすれ違わなかったのに、なぜか観光客でそれなりに賑わっています。不思議だ。この人たちは、どこから湧いてきたのだろう。

ううっ。坂道が厳しくなってきました。太陽も本格的に顔を出し始めました。地図をみると、本日の峠の頂点は、3523ft。現時点で高度が800mちょいだから、まだあと300m以上はのぼらなくてはならない。ひえー。

のぼるにつれて、景色がどんどん素晴らしくなっていきます。坂道を、荷物を積んだ自転車でゆっくりゆっくりとのぼっているので、風景をじっくりと眺めることができます。これぞ自転車旅行の醍醐味だね。

おー、壮大!

んー、雄大!

あのね、申し訳ないけど書くことないのよ。ただ走っていただけなので、別になにもイベントもなかったし。とにかくもう、暑くて、辛くて、なのに景色がすごすぎて、疲れていいのか感動していいのか、分からないままにただペダルを踏み込みます。ふみふみと。

やーっと下り坂だー!!!いやっほうー!時速50kmでふっとばします。

と思ったら、またすぐに上り坂です。アメリカ名物「やっと下りで楽ができると思ったら、すぐにもっとすごい上り坂が現れるよ攻撃」です。この攻撃に、このあともずーっとずーっと悩まされることになるのですが、この時のぼくは、知る由もありませんでした。

やっと登頂しました、Sitgreaves Pass!ここが本当の頂上だー!今日一日で1000m近く上ったぞ!足ががくがくだぞ!!疲れすぎて背中が変な形になっているぞ!吐き気も!寝たらもう二度と目を覚まさないような気がする!明日死ぬかも!

あー、しかし、苦労して上った甲斐がありました。素晴らしい景色です。車で来ていた夫婦連れのおじさんが、「ユーアーユーパーボーイ」と言ってくれました。ボーイじゃないんですけどね、結構なおっさんなんですけどね。

さて、ここからようやく本当の下り坂が始まります。もう1mも上ってやるものか。下るぞ!時速50km!

下って下って下ります。おくむらくんのちんちんのように長い坂道を、下って下って下って下って下って。やーーっふーー!

すげー、何キロ下ってきたのだろう。死ぬほど下って、さすがにブレーキを握る両手が痛くなってきたころに、ようやく道路が平坦になってきました。まーたまっすぐな道だ。目指すKingmanまでは、ここからまだ10km以上あります。

とにかく体がへっとへとです。早くバーガーにかぶりつきたい。っていうか、今日の日記長くないですか。

Kingmanなんて町はこの世界に存在しないのではないかしら。などと思い始めて。

どういう育ち方をしたらこんな風景になるのかしら。親の顔がみてみたいわ。そんなことを考えながら。

ようやく、Kingmanに到着です。こんなところに隠れていやがったのか。会いたかったぜ。

Kingmanは、なーんにも見どころがない、ふつーの町です。モーテルにチェックインして、アメリカにきて初めての洗濯をして、マクドナルドでバーガーを食って(アメリカのマクドナルドって、なぜか店員さんがアレな感じの人の多かったのだけど、どうしてかしら)、明日の道程を地図で確認して、さっさと眠りました。

06年10月05日(木)

ちょいとぼーっとしていたら、何時の間にか2007年になってしまいました。明けましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。
今年の目標は、正しく生きることです。
さて、日記の続きに戻ります。

あまりの暑さに夜中の三時に起床。どんな場所でも、どんな状況下でも、熟睡できるということがぼくの特技だったのですが、暑さと不安でほとんど眠ることができませんでした。こりゃ、このままテントの中にいても、朝まで眠れそうにないな。水も残りが少ないことだし、夜中のうちに行けるところまで行ってしまおう。と思いたち、出発することにしました。

ヘッドライトをつけて、テントの外にでます。空に星や月の光はまったくなく、ライトの光が飲み込まれてしまいそうな暗闇です。テントの周りを照らしてみると、おや、砂の一部が丸く濡れているぞ。うーん、雨でも降ったのかしら。どうみても、動物のおしっこの跡なのですが、この部分だけピンポイントレインが降ったのだと、自分に嘘をつきました。っていうか、恐いので、さっさとテントをたたみましょう。

せっせとテントをたたんでいたら、なぜか砂漠で死体を埋めているマフィアの気分になってきました。ふふふ。ボスの言いつけに背いたお前が馬鹿なのさ、とつぶやいたり。砂漠には、無数の死体が埋まっているんだぜ。

さて、出発です。ここから、約30kmほど進むと、Fennerという小さな町に到着します。そこまでの辛抱すれば、水も食糧も手に入ります。頭のヘッドライトと、自転車のライトの光のみを頼みにして、自転車を走らせます。
時おり、はるかかなたに、対向車線側を走る車のランプの光が見えます。道路は、数キロ先まで延びているので、光はなかなか近付いてきません。光が見えてから、実際に通り過ぎるまでが、とてもとても長く感じます。暗闇のせいでしょうか、とてもとても長く感じます。

こんなに完全な暗闇の中にいると、考えずにはいられません。ぼくは、宇宙の、どこにいるのだろう。

しばらく進むと、灯りと共に小さな町が現れました。時計を見ると、五時前です。自動販売機でもないかな、と思って少し探してみたのですが、見当たりません。工場らしき場所に、数人の人影が見えたのですが、さすがに恐かったので話かけませんでした。砂漠には、無数の死体が埋まっているのですから。

ようやく、朝焼けが見えてきました。あー、なんかいい感じ。喉がからからで死にそうだけど、いい感じだから許してあげよう。

虹だ!遠くの方に虹が見える!っていうかいつ雨が降ったのさ!?やっぱりあのピンポイントは雨だったのか?

六時過ぎ、Fenner到着。喉の渇きが限界を越えています。お店を見つけて、急いで一番でかいサイズのコーラを購入。フランクフルトも購入。んもー、こんなにうまいコーラを飲んだのは、生まれて初めてだよ。うめー。

ここからは、しばらくの間フリーウェイを走ります。なんとなく、空模様が怪しい感じ。

アメリカは、送電線までも馬鹿でかい。いや、実際には日本と変わらないのだろうけれど、空が広いせいか、やたらと馬鹿でかく感じます。迫力満点。

東に向かうにつれ、少しずつ天気も回復してきました。今日は、アリゾナへの入口、Needlesに宿泊する予定です。あともう少し!

すっげーなげー登り坂が続いたと思ったら、今度はすっげー長い下り坂が続きます。なんだか、アメリカに来てから、のぼっておりてのぼっておりてを繰り返しているような気がする。そしてこれからも、のぼっておりてのぼっておりてを繰り返すような気がします。

あー、やっと町が見えてきた!愛しのマクドナルドまであと7マイル、11kmちょいだ!っていうか、まだ午前中だ!気温上がりまくりだ!

そんなこんなそんなでようやくNeedlesに到着。午前11時。まだモーテルにチェックインするには早すぎるので、少し町をぶらぶらしましょう。

Needlesは、とても静かで小さな町です。特になにか名所のような場所があるわけではないのですが、雰囲気がとても良い。人通りも、走る車の数もそれほど多くない。どうしてこんなに気持ちが落ち着くのだろうと思っていたら、路上にゴミがほとんど落ちていないことに気づきました。素敵だ。

午後二時すぎにモーテルにチェックインして、少し離れた場所にあるお店でリップや日焼止めなど、旅の前に揃えるべきだったものをようやく購入しました。もはや手遅れかもしれませんが、明日からはちゃんと肌のお手入れをしていきたいと思います。

どうにも日記の更新が遅くて申し訳ありません。今後とも、よろしくおねがいします。

06年10月04日(水)

ミニマートでバナナマフィンとコーヒーの朝食を取っていると、隣接するガソリンスタンドからトラック野郎がやってきて話しかけてきました。よう、ボーイ。お前はいったいどこへ行くつもりだ?ぼくはすこし微笑んで答えます。兄弟、その答えはな、風の中にあるさ。おれの行く場所は、風の中に舞っているんだよ。彼は肩をすくめて、ハブアグッドトリップと言い残して去っていきました。そんな夢を見て、朝五時に起床、シャワーを浴びて、自転車のチェックをして、まだ薄暗いうちにモーテルを出ました。ミニマートでバナナマフィンとコーヒーの朝食をとって、大量の水を購入。

本日は、barstowからneedlesへ向かいます。お店はおろか自動販売機もほとんどないモハベ砂漠が、300km近く続きます。どこまで進めるか分からないけど、とりあえず行けるところまで行きましょう。今日も暑くなりそうです。

昨日に続いて、ひたすらにルート66を進みます。ただひたすらにまっすぐに、まっすぐに。時間が早いせいか、道路が廃れているせいか、通る車はほとんどありません。

これだ。ぼくの求めていた自転車の旅は。まっすぐな道を、どこまでもまっすぐな道を、奥村くんのちんちん(驚異的な長さ)のようなまっすぐに続く道を、いつまで走りつづけるような自転車の旅。

一時間走りつづけても、景色はほとんど変わりません。信号もないし、人もいない。店もないし、音さえもほとんどしません。自転車のタイヤが道路を擦る音と、チェーンが回る音、風の音、そんな静かな音の中を、走る。走る。

二時間後。徐々に、太陽が姿を現してきました。道路の状態が良くなったり悪くなったりするので、タイヤがパンクしないように、気をつけて走ります。

途中、映画『バグダット・カフェ』の舞台になった町を通過しました。バグダット・カフェという名前のカフェが本当に存在するらしいのですが、見付けることができませんでした。まあいいや。まっすぐな道が続いているし。

三時間後。まっすぐな道最高!と叫びながら走り続けます。ときどき通り過ぎるバイクライダーたちは、ほぼ全員ぼくにイエーイと合図を送ってくれます。いいやつらだ。

道路に並走して続いている線路の上を、電車が通過します。進行方向がぼくと同じ時は、「競争だ!」と叫んで猛スピードでペダルを回しますが、勝てるはずがありません。時には負けると分かっている勝負に挑まなくてはならないなんて、男って本当に辛いよな。ところで、アメリカの電車ってすごくかっこいい!

昼前に、Ludlowという町に到着しました。なにもない場所かと思っていたのですが、ミニマートがあり、中では食糧やバーガーが売っていました。今日の分の食糧はすでに購入してあるのですが、念のために水やチョコレートを追加で購入。女性の店員さんに、モハベ砂漠内でキャンプできるような場所はありますか?と聞いたら、「まあ、人が近くに住んでいない場所ならどこでも大丈夫じゃない?さそりとかガラガラ蛇とかコヨーテとかいるから、死ぬかもしれないけど」と言われました。チャリでどこまで行くつもりなのか聞かれたので、目的のコースを教えると、「まじなの?あなたきちがいでしょう」と言われました。(以後、会話A)。

四時間後。あいかわらずまっすぐに道が続きます。いくら走っても全然飽きません。刺激がないことに、とても強い刺激に感じます。少し疲れてきたけど、まだまだ走れます。

五時間後。

六時間後。
飽きた。

七時間後。
なんかむかついてきた。

八時間後。
刺激を、もっと刺激をくれ!爆発とか!なんでもいいから!

太陽の光がとても強くなってきました。いくら水を飲んでも、すぐに喉がからからになります。水は、4リットル近く持ってきたけど、足りないかもしれません。

木陰で一休み。今日はどこまで行こうかしら。

へっとへとになってくったくたになって、最高に疲れている時に、後ろのタイヤがパンクしました。見ると、暑さのせいでタイヤがへろへろになっています。替えのタイヤは持ってきていません。うひゃー、これ大丈夫かな。needlesまで到着できればなんとかなるんだけど、needlesまであと200kmぐらいあるよなー。とりあえず太陽の光を浴びながらチューブのパンクを直して、空気を入れて、再出発します。タイヤがバーストしなければ良いけれど。

モーテル発見!と思ったら、つぶれていました。残念。すぐそばに郵便局(砂漠の郵便局ってなんか素敵)があって、その隣に自動販売機がありました。ペプシコーラを一気飲み!コーラがこんなにおいしいなんて!

Highslide JS
完全に無人のモーテル。不法侵入すれば、一泊ぐらいできそうでしたが、大人なのでそういうことはしませんでした。

さすがに疲れてきたので、この辺でキャンプを張ろうかしらと思っていたら、不思議なものを見つけました。木に、たくさんの靴が吊るされています。なんだこれ。干しているようには見えません。木の下に、大量の靴が落ちているし!ひえーこえー!この辺でキャンプをしたら、呪われそうなので、もう少し先まで進みましょう。

そろそろ本当に疲れてきたので、この辺でキャンプを張ろうかしらと思っていたら、再び不思議なものを発見。石で、字が記されています。なんだこれ。しかも、ずーっと先まで続いている。うーん。神さまでも呼んでいるのかしら。なにかの儀式とかだったら申しわけないので、キャンプをするのはもう少し先にしましょう。

暑い。確実に気温は35度を越えています。40度近いような気がする。10月でこの気温ですから、夏なんかは一体どんなことになっているのだろう。

レストラン発見!と思っていたら、またまたつぶれていました。さっきのモーテルも、このレストランも、フリーウェイができる以前の、ルート66がまだ健在だった頃のものなのかな。

やばい。目がくらくらしてきた。

本日はここまで。道路から少し離れた、人目のつかない場所にテントを張ることにします。ローインパクトを心がけて、今回の旅行初のキャンピングです。大地にキスをして、ペグを打ち込みます。

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この後、もっと日陰にテントを移動しました。それでも暑くてなかなか眠ることができませんでした。

夕方の六時を過ぎても、気温が下がる気配は一向にありません。水がどんどん減っていきます。この水は、明日の分も含まれているので、すこし節約しなくちゃ。

明日は少し早起きをして、すずしいうちに砂漠を抜けてしまいましょう。そういうわけで、熱帯夜の中、おやすみなさい。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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