

どこかに遊びに行こうと思っていたのですが、外に出たらとても寒かったので、お茶が飲めるところで夜まで読書をして過ごしました。日々は安寧、心がたゆたっております。
先月観た『戦場のフォトグラファー』のジェームズ・ナクトウェイ氏の戦争写真に関する発言がずーっと引っ掛かっていて、別の戦争カメラマンの本を読んだり映画を観てみたいのですが、何を観たら良いのか、何を読んだら良いのかさっぱり分からず、とりあえず以前に一度観たことのある一ノ瀬泰三をモデルにした『地雷を踏んだらサヨウナラ』を観てみました。しかし、役者はともかく映画としてはひどすぎてなんの参考にもならず、一ノ瀬泰三本人のよる手記を読んでみようと思って調べたところ、今月末から一ノ瀬泰のドキュメンタリー映画『TAIZO』が上映されるという情報を発見。『地雷を踏んだらサヨウナラ』のチームオクヤマが製作というのが多少気にはなりますが、要チェック。
そういえば、スーザン・ソンタグの『他者の苦痛へのまなざし』、まだ読んでないや。読まなくちゃ。

本屋さんで雑誌『山と渓谷』を購入。特集は、「冬山デビューしよう」と「ヒザの痛みを克服する」。まさしく今のぼくたちのためにあるような特集ではないですか。初心者向けから中級者向けまで、初めての雪山登山に適した山を紹介、さらに装備や心得なども載っているので、憲の字と昭の字には自腹で購入して読んでおいてもらいましょう。「第三回登山者検定」もあるし、しかもフォトカレンダー付きなのでとてもお得だよ。さて雪山、ぼくとしては最初はあまり無理をせずに西穂高などが良いのではないかと思うのですが、いかが。
夜、映画『抱擁』を観ました。十九世紀のイギリスを代表する桂冠詩人ランドルフ・ヘンリー・アッシュと女流詩人であるクリスタルベル・ラモット、この二人の恋文を偶然に発見した大学の研究員ローランド・ミッチェルが、ラモットの研究者であるモード・ベイリーと共に二人の偉大な詩人の恋の行方を調べる、というお話。以前に予告編を観たときに、非常に危険な香りを放っていたので映画館には観に行かなかったのですが、いざDVDで観てみたらとても面白かった!過去に存在する二人の詩人の間で交わされた手紙や日記などをもとに、彼らの愛の過程を同時的に辿るローランドとベイリー、「語られる」ことのなかった過去が、「読まれる」ことによって現代に蘇り、過去の二人の愛にシンクロするようにお互いに魅かれ合っていく現代の二人。文芸的な映画はうんこみたいなものも多いですが、この映画はとても良かった。特にラストの・・・
ちなみに、ランドルフ・ヘンリー・アッシュとクリスタルベル・ラモットというふたりの詩人は実在の人物ではありません。アッシュはロバート・ブラウニング、ラモットはクリスティーナ・ロセッティがモデルとなっているそうです。
語られもせず、記されもしない事実もある映画『抱擁』より

夕方に、お仕事を終えて帰宅しようとしたときのこと。日が短くなってすっかり暗くなった秋の夕方の帰り道、ふと見ると路傍に猫がうずくまっている。にゃあ、と話しかけると、猫はこちらを凝視、どうやら野良らしく、近づくとすごい勢いで逃げ出してしまった。野良は兎に角に用心が深い、逃げ出すのも詮無いことと思い、駅に向かって歩き出す、しばらく歩くと後ろから、にゃあという声。振り向くと、先程の猫が道の真ん中に座ってこちらを見ている。にゃあ、と応えると、向こうもにゃあ、と返事をする。それではと思い、ゆっくりゆっくり、驚かさないように近づく。にゃあ、と言うと向こうもにゃあ、と答える。あと三歩というところ、突然に猫はダッシュで逃げ出す。なんだよう、と思い、電車にも遅れてしまうのでもう行かなくてはと、猫に未練はあるものの再び歩き出す。次の電車に乗り遅れると、一度で済む乗り換えを二度しなくてはならないのです。少し急ぎ足で、しかししばらく歩くと後ろから再び、にゃあという声。振り向くと、先程の猫が道の真ん中に座ってこちらを見ている。にゃあ、と応えると、向こうは如何にも親しげな感じで目を細めて、にゃあ、と返事をする。念のためにもう一度にゃあ、と言うと、向こうは道路に体を投げ出すようにどさっと横になり、目を細めて、にゃあ、と応える。それではと、驚かさないようにそろりそろりと近づきます。あと二歩というところ、突然に猫はダッシュで逃げ出す。そのようなことをその後に三度ほど繰り返し、結局この猫がぼくに心を許すことはなく、電車にも乗り遅れました。けれども、このようなことがあると一日がとても良い日であったように思えるので、許してあげる。
来世というものがあるかどうか、僕未だこれを知らない。仮にもそれがあるならば、そこにもこの地球のように猫がいてくれなくては困ると思うのである。(大佛次郎)