03年10月02日(木)

 久方ぶりの友人と、少し離れた郊外でお酒を飲みました。

 友人は、いやーこの歳のなると人生の先が漠然と見えてきて、生きている意味がよくわからなくなるなあ、と酒を一口、そんな言葉にぼくは心中、先なんて全然みえねーよと思いながらも、昔は良かったなあなどと話を合わせ、実は人生で今が一番楽しいということは胸中に、繰り返しの思い出話に華咲かせ、酒をごくりと。

 帰宅後、サム・ライミの出世作『死霊のはらわた』を観ながら酔いをさます。十年以上ぶりに観たけれど、面白過ぎてびっくりした。役者さんたちの演技も紙一重ですごいけれど、まだCG技術がない時代のため、おどろおどろしいシーンでは、画面が突然シュバンクマイエルの作品のようになるのが、恐いというよりもむしろ面白いし、かっこいい。70年代後半から80年代のホラー映画は本当に素晴らしい。

 布団に横になり、田部重治著「山と渓谷」を読書。ワーズワースの翻訳などもされている田辺さんの素敵な自然礼賛を読んでいると、やはり山は、気の合う仲間、登り方の同じ仲間たちで行くものであることを実感させられる。登る気持ちは違っても、感じる心が一緒であれば、田部さん曰く、ただ一つの大きな喜びの一致が、他の小さな不一致の不満をかきけして、深い満足の感情をもたらせてくれる。登り方の異なる人と山を登ればストレスがたまるばかり。肝に銘じて。

03年10月01日(水)

 十月になりました。お庭の彼女にこんにちは。

 数年前、ビル・ゲイツが訪問先のブリュッセルでパイを顔面にぶつけられた事件がありました。犯人はパイ・アナーキスト、ノエル・ゴダン率いるチームで、今までに五十人以上の著名人にパイをぶつけてきたパイ投げのプロ集団です。これまでの彼らのパイ投げによる犠牲者は、小説家であるマルグリット・デュラス、映画監督のジャン=リュック・ゴダール、フランスの哲学者であるベルナール・アンリ・レヴィ、映画女優のキャサリン・ドヌーブ、ファッションデザイナーのカール・ラガーフェルト、歌手のケニー・ロジャースなどなど錚々。面白いのはターゲットとなる相手を選ぶときの基準で、ひとつは「Powerful」、ひとつは「Self-Importance」、そして最後のひとつは「Lacking of Humour」。要するに、精力的で自尊心が強くてユーモアのセンスのない野郎はパイでもかぶってろ!ということです。

 どうしてこの事件を覚えているのかというと、この「ユーモアの欠如」という基準が気になったからで、常々ユーモアに生きたいとは思っている身ではありますが、うーん、ユーモアに生きるというのは、なかなか大変なことなのです。思うに、ユーモアのセンスというものは、ぼくが誰かに対して示す場合だけではなくて、誰かの行動をぼくが受け止める時にも問われるもので、ユーモアに包まれた発言や行動に対して、そのユーモアの外装をすべて剥ぎ取って意図を判断しようとするのが、Lacking of Humour、けれども、どこからどこまでがユーモアで、どこからどこまでが不謹慎なのか、その境界は非常に微妙なところなので、それを粋に推し量るのが、ユーモアのセンスというもの。

 世界のすべてをユーモアに受け止めるには、あまりにも生き難い時代ではありますが、みなさんお元気で。そういうわけで、今月のぼくの生活の目標は、ユーモアに生きるということで。

03年09月30日(火)

 九月最後の日、むにゃむにゃと寝ぼけ眼でテレビを見ていたら、日本の企業が慰安旅行で行った先の中国で、数百人規模の集団買春を行ったとして中国政府から抗議を受けているというニュースが流れていました。

■日本人による集団買春、中国当局が捜査開始

 ううむ、ひどい話だなあ、でもこれ本当かしら、そりゃそれだけ大勢で旅行に行けば、そんなことをする人も何人かはいると思いますが、いくら何でも数百人はないのではないかしら、などと思っていると、テレビのコメンテーターが「残念ですが、本当だと思います。こういうホテルぐるみで、日本の男性に売春を斡旋しているという事実は昔からありますから」などと言っています。アジアの諸国で体を売る女性が大勢いることは知っているし、ぼくも旅行先で声をかけられたことは何度もあるし、確かにそのような事実があることは否定しませんが、ここで問題になっているのは、買春が数百人という集団で行われたということで、これがもし、ひとりやふたりだったらニュースになるようなことは絶対になかったはずです。それをあっさりと、なんの裏付けも無く、単にアジアでの売春・買春が日常的であるという理由だけで、数百人による買春という信じがたい話を「残念ですが、本当だと思います」などと言ってしまうこのコメンテーターは、自分が何を言っているのかを分かっているのかしら。ぼくのまわりにもこういう人はいますけれど、まるで彼は、この事件がどうしても事実でなくてはならないような、そのような印象を受けてしまいます。

 おそらく今後、ろくに調査もせずに印象だけで物事を判断しようとするおばかちんこたちの活躍によって、この事件の真相がいかなるものであれ、集団買春が行われたことは事実であるという認識だけが世間には残ることになるでしょう。様々な意味でいろいろな問題を含んだ事件でありますから、出来ればどこかのメディアに詳しくレポートを続けて欲しいものです。償うべき罪は償い、はらすべき汚名ははらさなくては。

 ちなみに、こんな記事も。

■中国での集団買春を否定 ホテル宿泊の建設会社


Sub Content

雑記書手紹介

大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

最近の日記

過去の日記

鉄割アルバトロスケットへの問い合わせはこちらのフォームからお願いします

Latest Update

お知らせ

主催の戌井昭人がこれまで発表してきた作品が単行本で出版されました。

About The Site

このサイトは、Firefox3とIE7以上で確認しています。
このサイトと鉄割アルバトロスケットに関するお問い合わせは、お問い合わせフォームまでお願いします。
現在、リニューアル作業中のため、見苦しい点とか不具合等あると思います。大目にみてください。

User Login

Links