
九月最後の日、むにゃむにゃと寝ぼけ眼でテレビを見ていたら、日本の企業が慰安旅行で行った先の中国で、数百人規模の集団買春を行ったとして中国政府から抗議を受けているというニュースが流れていました。
ううむ、ひどい話だなあ、でもこれ本当かしら、そりゃそれだけ大勢で旅行に行けば、そんなことをする人も何人かはいると思いますが、いくら何でも数百人はないのではないかしら、などと思っていると、テレビのコメンテーターが「残念ですが、本当だと思います。こういうホテルぐるみで、日本の男性に売春を斡旋しているという事実は昔からありますから」などと言っています。アジアの諸国で体を売る女性が大勢いることは知っているし、ぼくも旅行先で声をかけられたことは何度もあるし、確かにそのような事実があることは否定しませんが、ここで問題になっているのは、買春が数百人という集団で行われたということで、これがもし、ひとりやふたりだったらニュースになるようなことは絶対になかったはずです。それをあっさりと、なんの裏付けも無く、単にアジアでの売春・買春が日常的であるという理由だけで、数百人による買春という信じがたい話を「残念ですが、本当だと思います」などと言ってしまうこのコメンテーターは、自分が何を言っているのかを分かっているのかしら。ぼくのまわりにもこういう人はいますけれど、まるで彼は、この事件がどうしても事実でなくてはならないような、そのような印象を受けてしまいます。
おそらく今後、ろくに調査もせずに印象だけで物事を判断しようとするおばかちんこたちの活躍によって、この事件の真相がいかなるものであれ、集団買春が行われたことは事実であるという認識だけが世間には残ることになるでしょう。様々な意味でいろいろな問題を含んだ事件でありますから、出来ればどこかのメディアに詳しくレポートを続けて欲しいものです。償うべき罪は償い、はらすべき汚名ははらさなくては。
ちなみに、こんな記事も。
知人の会社にお手伝いに行って、とんかつ御膳をごちそうになり、午後には昭の字と烏山から成城学園を経由して芦花公園までマラソンをして、公園で降りたり昇ったり膝を曲げたりいろいろと運動をしていたら夕方になり、風神亭でビールを飲みながら山談義、落としたカロリーのすべて取り戻して、帰路にアイスクリームを買っていたら勉の字がとぼとぼとと、折角ですからとカモシダのビルでレゲエの話なんかを伺ったものの、何を言っているのかさっぱり分からず、分かった振りをして頷いておりました。
帰宅後、『殺人マニア宣言』に収録されているピーター・ジャクソンの初期の頃のインタビュー(『乙女の祈り』に関するもの)を読んでいたら、無性に『ブレインデッド』が観たくなったのでビデオレンタルで借りてきて観ました。今でこそ『ロード・オブ・ザ・リング』の大御所監督でありますが、1992年に発表された『ブレインデッド』は『ロード・オブ・ザ・リング』の千倍ぐらいおもしろいのです。いわゆるゾンビ映画なのですが、最初から最後まで笑いっ放し。主人公はマザコンの頼りない青年で、彼のお母さんがゾンビになって、助けに来た看護婦さんがゾンビになって、顔見知りの神父さんがゾンビになって、からんできたパンキッシュな若者がゾンビになって、ゾンビになった看護婦さんと神父さんはところ構わずセックスをして、ゾンビ子供が出来て、ゾンビを隠していた家に大勢が押しかけてパーティーをして全員がゾンビになって、仕方がないから芝刈り機で全員を切り刻むというお話。十年ぶりぐらいに観たけれど、やっぱり最高のスプラッター・コメディでした。
とんでもなく天気の良い朝。この天気、来週の登山の日まで取っておいて欲しかった。来週も晴れますように。
アンナ・パキン主演の映画『ダークネス』を観ました。アメリカからスペインへ越してきた家族が、新しい家に宿る「暗やみ(ダークネス)」に襲われるというホラー映画。「40年に一度の皆既月食。7人の子供の失踪事件。円形の家。すべてが闇に包まれるとき、記憶を失った少年の40年の空白が、息を始める・・・」。ジャウマ・パラゲロ監督がこの映画に先立って撮った、二分間の宣伝用のプロモーション・ビデオは素晴らしく恰好良くて怖いのに、肝心の本編はその怖さが半減していて、それは多分、恐怖を意味付けしようとして用意した要素(ウロボロス信仰など)が、蛇足的な役割しか果たしていないせいではないかしら。ホラー映画のストーリーに余計な根拠なんかいりません。この映画も、「暗やみの恐ろしさ」だけを追及して欲しかったなあ。でも、アンナ・パキンは大好き。