03年08月12日(火)

 引きこもり継続中。夏休みに入ってからのほぼ毎日、十二時間以上眠っている。良くないなあ。

 映画『クラム』を観る。もう、びっくりするぐらい面白かった。めちゃ感動。すばらしいドキュメンタリーだった。監督は、『ゴースト・ワールド』のテリー・ツワイゴフ。アンダーグラウンド・コミックの巨匠、ロバート・クラムとその家族と友人へのインタビューを中心としたドキュメンタリー。出てくる人のほとんどがどこか病的で、とくにクラムの家族はすさまじい。詳しい映画評はこちらで読むことができる。印象的だったのは、クラムがストリートを歩く人々をスケッチするシーン。雑誌や映画には普通の町並みは登場しない、とクラムは言う。彼は自分(あるいは友人)で撮った写真を元に、町並みをデッサンする。画面を通してぼくの目に映る通行人や町並みは、概して普通ではない。監督のツワイゴフは、カフェでクラムにインタビューをしながら、その後ろの席でネズミにエサを上げている若い男を映す。最初から最後まで、まったく目を離すことができない素晴らしい映画だった。

 なんだか興奮したので、続けて『ケミカル51』を観る。「コカインの51倍強力・LSDの51倍の幻覚作用・エクスタシーの51倍の絶頂感」を持つという究極のドラッグを調合した男のお話。人の感覚作用に対して、51という具体的な数字をどのような根拠からはじき出しのかが気にはなるものの、結構好きです、こういう映画。でも『クラム』の余韻で未だ幸せなぼく。

03年08月11日(月)

 起床。朝食にチーズをのせたトーストとバナナ。最近、フルーツをたくさん食べているせいか、お通じとてもよろしい。

 バースが『尽きの文学』で言及しているボルヘスの『ドン・キホーテの著者、ピエール・メナール』が読みたくなったので、本棚をあさって『伝奇集』を探したけれど見つからない。仕方がないので図書館に行ったところ、なんとお休みではありませんか。しかも今週いっぱいはお休みらしい。悲しい。

 六十年代のアメリカ文学のことを調べていて、マルカム・ブラッドベリの『現代アメリカ小説—1945年から現代まで』などを読んでいるのだけど、六十年代と今の社会状況って、あまり変わらないというかむしろ似ているように思う。六十年代に崩壊したはずのパクス・アメリカーナは九十年代を通して見事に復活しているし、世界中の多文化主義に反するかのようにアメリカだけがグローバリズムを提唱し続けている。六十年代のポストモダン小説の発生の背後に、六十年代のケネディの暗殺というスイッチがあったとすれば、現代にもそれに匹敵するほどのアメリカ国民の価値観を揺さぶる事件が起こっている。六十年代と現在の文学的状況で決定的に異なるのは、作家のほとんどが実験的な文学作品の退屈さに気付いているという点で、価値観の変革時に反動として誕生する実験的な作品は、ある一部の傑作を除いて、ほとんどの作品が自己満足的なうんこになってしまうということを彼らは経験的に知っている。もちろん彼らも、それらの実験的な作品が次の世代の新しい文学が誕生する布石になっていることは否定しないだろうけれど。

 夜、『アート・オブ・エロス』シリーズの『ホテルパラダイス』を観る。とても面白かった。『ホテル・パラダイス』はニコラス・ローグ監督の作品。明日に結婚式を控えた花嫁さんが、朝起きたらホテルの一室に男と寝ていてやっべーという話。男のロマンチックな話術に、花嫁がどんどんおちていく。『ブルーン・ブルーン・ブルーン』はメルヴィン・ヴァン・ピーブルズが監督の黒人映画。ブードゥーの呪術師を助けたもてない君、そのお礼に女性に変身するバイクをもらう。あまりにもださすぎて面白かった。『エレファント・ネバー・フォゲット』の監督はデトレフ・バック。ドイツ映画。事故った夫人を助けた小人病の象使いが、そのお礼に夫人にセックスを要求する。この三本の中では、これが一番良かった。一番えろかったし。

03年08月10日(日)

 あまりの暑さと日差しで起床。朝食に、今年になって初めての白桃。ふとんを干して、部屋のお掃除。

 午後、本屋さんを徘徊。京極夏彦の『陰摩羅鬼の瑕』を購入。こりゃまた分厚いなあ。今月号のスタジオボイスも一緒に購入。お茶を飲めるところへ行って、読書。『陰摩羅鬼の瑕』は読み始めたら止まらなくなりそうなので、最初のほうだけ読んでやめる。高橋源一郎が京極堂の小説をドラクエに喩えていたけれど、言い得て妙。

 今月号のスタジオボイスの特集は「アジアの現在 - 『サイアム的』パワーの時代へ」。サイアムとは、バンコクにある歓楽街の名前。東南アジアを中心に、現代のアジアのカルチャーを紹介している。映画はともかく、文学にしても音楽にしても芸術にしても、アジアの作品に関する知識は皆無に等しかったので、とても面白くて勉強になった。バンコクに行っても、いつもカオサンあたりをぶらぶらしているだけなので、このような新しい文化に接することはほとんどなかった。次に行くときはタイのサブカルチャーにふれることが出来るような場所にも行ってみよう。

 夜、『アート・オブ・エロス監督たちの晩餐』を観る。世界の巨匠たちが、えろをテーマに撮った短編映画集。今回観たのは『カーシュ夫人の欲望』『悪魔のレッスン』『ウェット』の三本。『カーシュ夫人の欲望』の監督は、ケン・ラッセル。ホテルに宿泊中の小説家が、えろっぽい女性を見かけ付いて行ったところ、彼女の部屋の中からバイブレーターの音がする。わお、おなってんじゃん!と勘違いした小説家は、さらに彼女のストーキングを続け、最後には・・・みたいなお話。感動的に面白かった。各シーンの色使いや配置などもとても好み。女性がミステリーサークルの上で踊るシーンとか、まじで最高。『悪魔のレッスン』の監督はヤヌス・マジョウスキー。まるでフェルメールの絵画のように美しい光の中で、牛のようなおっぱいの女の子が牛のおっぱいを絞るシーンから始まる。この作品は普通にえろくて、純朴な田舎の女の子が謎めいた男性に性を喜びを教わるという話。全体を通して幻想的で、ポーランドの美しい風景が印象的。とにかくえろい。『ウェット』の監督はボブ・ラフェルソン。これがまた最高に面白くて、営業終了まぎわのバスタブ屋さんに黒人の女性がやってきて、至急バスタブが必要だから、展示品にお湯をはって入り心地をためしたい、と言い出す。店長と女性の会話がとても面白い。なんとなく小説で読んでみたいような話だった。

 この『アート・オブ・エロス』というシリーズは、他にも何作かあるらしい。八月下旬にすべてを収録した『アート・オブ・エロス 監督たちの晩餐 DVD-BOX 』が発売されるらしいので、買っちゃおうかしら。

 夜中に眠れず、少し走る。久しぶりに走る。静寂がとても気持ち良い。


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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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