
『夢の旅路』を観ました。
オープニングといいますか、映画の始まりがとてもかわいらしくて、車が通らないような砂漠のど真ん中で、有料道路の料金所を作って50年間客を待っている老人のところに、ドキュメンタリーを撮っている三人組が噂を聞きつけてやってきます。五十年目にして初めての通行客が通る瞬間を撮影しようとするドキュメンタリー三人組。初めての客を、正装して待つ老人。しかし車は、料金所をすり抜けて走り去ります。
それから数十年、老人になったドキュメンタリー三人組を乗せたタクシーの運転手は、そのうちに一人に「運命の人を探せ」といわれ、その直後にある女性に一目ぼれをし、ほとんどストーカーのようにアタックを開始します。そのようなお話。
この映画に関して何も書くことがないのが辛いのですが、なかなか素敵な映画でございました。見知らぬおやじに「もうすぐ運命の人に会う」と言われ、直後に好きになった人を迷惑も考えずに追い掛け回すティム・ロスが健気で。愛だね、愛。
所属するヒップホップグループの本格活動のために、お友達が東京に引っ越してきました。
この一週間というもの、果たして引っ越しはうまく行くのだろうか、ちゃんと生活できるのだろうかと、ぼくのほうがどきどきしておりました。
しかし思った以上に彼と彼女はしっかりしていて、引っ越しも無事に終了、おいしい鍋を頂いておなかがぷにゅぷにゅになり、例のごとく酔っぱらっておならばかりをしておりました。お恥ずかしい。
それにしても、引っ越しの手伝いに来たメンバーのほとんどが鉄割であることを考えると、彼の友人関係の狭さが伺い知れまする。もっと世間に目を向けなくてはいけません。ファイト!内倉!
ところで、引っ越しの手伝いに来ていたはずの勉蔵君は、皆といてもうつむき加減で、ちょっと目を離すと横になっていたり、ぶつぶつとなにかを呟いていたり、帰ったのかと思ったらポン酢を買って戻ってきたり、なんだか情緒がとても不安定な様子ですが、大丈夫でしょうか、彼。もともと気は違っておりましたが、最近、よりいっそうおかしな感じでございます。
それでも、勉蔵君は握力が強いとか、仕事ができるとか、結構もてるとか、部屋がきれいとか、無印良品に詳しいとか、映画を観る眼が確かだとか、パソコンがすごいとか、メガネをとると男前だとか、話題の内容が彼の方に向くと笑顔で話に入ってきていたので、まあ、まだ大丈夫ですかね。いざとなったら彼のノートパソコンを二つ折りにでもすれば目も覚めることでしょう。
次いでわたくしも引っ越したい。
最近、16時から16時半ぐらいの間に、こっそりとお仕事場を抜け出して、しばし路上でゆうがたのとろりとした時の夢を見ております。
写真だと良く分からないと思いますが、夕焼けの具合がとてもよろしくて、地面も、木々も、人も、僕自身も、辺り一面がオレンジ色に染まっております。ああ、気持ちいい。
尾崎放哉は「たつた一人になり切つて夕空」などと詠んでおりますが、この句の素晴らしさを、しみじみと感じます。
それにしても、夕日に身をゆだねながら思うのは、あの西日を拝みながら一心に極楽浄土を思い描いていた妙好人のことで、極楽浄土を想念すれば往生できると信じていた彼ら彼女らが、一体どれだけの想像力を働かせて夕日の彼方西方十万億土の阿弥陀如来に想いをはせたのか。より美しい極楽浄土を夢想すれば、死に際して阿弥陀如来が来迎してくれる信じていた彼らが、何年何十年と極楽浄土と彼岸を想い続け、生涯を通して南無阿弥陀仏を唱えていただろうと想像すると、こうしてのほほんと夕日に身をまかせている自分の幸福に、罪悪感を感じると同時に、一生をかけて彼らが思い描いた極楽浄土の、その想像力に心を魅かれてしまいます。
今日も夕陽となり部屋に座つてゐる - 尾崎放哉