02年05月23日(木)
来年以降の鉄割存続のために、博多から東京までの旅費と時間を具体的に計算してみました。

基本的はコンセプトは「お金をかけずに手間かけて」です。
やむを得ない場合を除いて、東京までの旅程はすべて徒歩で行なってもらいます。

最初に、博多から門司まで、72kmの道のりを歩きます。
門司から下関までは、海を渡らなくてはいけないので、ここだけは仕方がないので山陽本線で、渡ることにします。
下関で電車を降りたあとは、東京の根津までなんの障壁もなく歩くことができますので、1050kmを歩いてもらいます。

江戸時代、人は東海道五十三次を14日間で歩いたと言いますので、一日に40キロ歩いてもらうとして、博多から門司まで2日、下関から東京まで26日かかります。
やんちゃな方ですから、おそらくは各所各所で町の無法者などと対決もするでしょうから、3日は余分にみて、ちょうど31日、一ヶ月で東京に到着する計算になります。

東京に着いたら、本番までの2週間、稽古に参加してもらいます。
その間は、芦花公園にテントを張れば、寝泊まりは十分にできるでしょう。
その間の食事は、鉄割でたくあんとかを用意します。
本番が無事終了したら、再び一月かけて博多に帰ってもらいます。

旅費に関しては、最初にテントや寝具類は買い与えるとして、食費は朝と夜にコンビニでおにぎりをひとつずつ、ひとつ105円が2個で210円。
それが31日分で6510円。
飲み物は、2リットルの水を4日で飲むとして、31日で約8本、一本200円として1600円。
宿泊費は、テントを持っていくので0円。お風呂は昼間に川で済ませましょう。
交通費は、門司ー下関間が220円。
合計、8330円。
それが往復で16660円。
都内にいる間は、基本的に鉄割のメンバーのボランティアで生活をしてもらいますので、費用は0とさせていただきます。

鉄割は、三ヶ月に一回の割合で本番がありますから、三ヶ月ごとに博多を出発してもらいます。
一ヶ月かけて来て、二週間滞在して、一ヶ月かけて帰りますから、博多に帰り着いた二週間後には、再び東京に向かって出発してもらうことになります。

そうなると、一年のうちの八ヶ月は徒歩の旅をしているという、なかなか素敵な生活を送ることになります。
そもそも人間は、歩くことによって思想を育ててきました。
アリストテレスは散歩をしながら学問を語り、「逍遥学派」と呼ばれました。
ジャン・ジャック・ルソーは「私の頭は、足といっしょにしか進まない」といい、散歩をしながら思索に耽りました。
西田幾多郎はあまりの思索の激しさに、常に脂汗をかきながら散歩をし、彼の歩いた道は、現在では「哲学の道」と呼ばれています。
ワーズワースは自然に満ちた散歩道を愛し、多くの素晴らしい詩を書き上げました。
ポール・オースターは「歩くことは想像力を開放する」といい、彼の作品「ムーン・パレス」の主人公マーコは、その物語の最後でユタ州からカリフォルニア洲までの砂漠を歩いています。
電車やバスに乗っても、どうせ眠っているだけなのでしょうから、時には歩きながら物思いに耽るのも良いのではないでしょうか。

とは言え、さすがに年間9600キロを歩くというのは大変だと思います。
そこら辺は、鉄割での自分の存在の大きさを自覚して、納得していただくしかありません。
02年05月22日(水)
水木しげるは、「二笑亭主人」の最後で以下のように書いています。
『二笑亭』は人物はともかく建物が面白いのです。その製作者が"精神障害"だからといって、捨ててしまってはいけないのです。
しかし、"精神障害"である製作者が生みだした作品群は、一般的に「アウトサイダー・アート」と呼ばれる芸術分野の一形態として、捨てられるどころか近年急速にその存在が世間に知られつつあります。

アウトサイダー・アートに関してみずのき寮絵画教室主宰代行である谷村 雅弘さんは以下のように定義づけています。
アウトサイダー・アートとは、美術の歴史や決まりごと、流行などには目もくれず、評論家や画商の評価に対しても全く無関心に、自分自身の内側からわき上がる衝動に突き動かされ、創意工夫を凝らして作り出す作品の総称である。ヨーロッパでは約80年の歴史を持ち、フランス現代美術の巨匠:ジャン・デュビュッフェによって“アールブリュット”(加工されていない“生の芸術”と言う意味のフランス語)と命名され、我が国では最近“エイブル・ア−ト”(可能性の芸術)なる造語も生まれている。
ぼくはアウトサイダー・アートに関してはほとんど何も知らないのですが、ぼくの持っているEsquire1993年10月号に、「暴走、アウトサイダーアート」という特集が掲載されており、何人かのアウトサイダーの芸術家たちが紹介されています。
その中で、最も興味深いのが、ヘンリー・ダーガーです。

ヘンリー・ダーガーは、1892年にアメリカ、イリノイ州シカゴに生まれました。
幼いうちに養子に出され、8才でカトリックの洗礼を受け、その後知的障害者と認定され、施設に入ります。
しかし17才の時に施設から逃亡、その後病気で入院する71才まで掃除婦、皿洗いなどをして生計をたて、81才(1973年)でお亡くなりになるまでその生活は続きます。
死後、四十年に渡ってダーガーがひとりで住んでいた彼の部屋から発見されたのは、百を越える挿し絵を含む「非現実の王国、あるいはいわゆる非現実の王国におけるヴィヴィアン・ガールズの物語、あるいはグランデリニアン大戦争、あるいは子供奴隷の反乱に起因するグラムディコ.アビエニアン戦争」と題された全15巻15000ページにのぼる大著でした。

その内容は、奴隷少女たち<ヴィヴィアン・ガールズ>の軍隊が、架空の王国の支配権を強奪した凶悪な奴隷主であるグランデリニアン人と戦うというストーリーが骨子になっている、非現実的な王国物語でした。
幻獣ブレンギグロメニアン・クリーチャーたちが空を飛びかうその王国で、男性器をつけた幼い少女たちが、戦いのなかで拷問、虐殺されていく物語を、ダーガーは19才から71才までの間、ひとり部屋にひきこもり書き続けていたのです。

さすがに15000ページを読む気にはなりませんが、ジョン・マグレガーが書いた「ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で」が邦訳されています。
これはちょっと読んでみたいなあ。でも6500円は高いなあ。

ダーガーに関しては、以下の二つのサイトがとても参考になります。

■ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で
作品社から出ている「ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で」でのオフィシャルサイトです。
■Realm of the Unreal: A Page About Henry Darger
アメリカのダーガーのWebサイトです。挿し絵等をみることも出来ます。

そういえば、雑誌「PEN」の次号でも、アウトサイダーアートの特集を行うみたいです。
02年05月21日(火)
奥村君とダンディズムについて話していた折、なにかのきっかけで「二笑亭奇譚」という面白い本があるということを教えて頂きました。

この本は、以前にちくま文庫から出ていたらしいのですが、残念ながら今では絶版となっていて、古本屋で探さないと手に入れることができません。
しかしどうしても「二笑亭」について読みたかったので、Webで調べたところ、水木しげるが「二笑亭主人」という漫画で二笑亭について書いてることを知り、早速「奇ッ怪建築見聞」と「東西奇ッ怪紳士録」を購入しました。

二笑亭の主人の金蔵君です。これまた素敵なお顔。

性格強情金蔵君

水木しげるの書くところによると以下の通りです。

昭和の初め、渡辺金蔵によって建てられた「二笑亭」という建物が深川門前仲町にありました。
その建物は、後に精神病と認定される渡辺金蔵という人間の「修養」を体現するためだけの、決して人の住むことの出来ない建物でした。

渡辺金蔵は、精神病を発症する以前より、性格的に強情なところがあって、己の「修養」の信ずるところであれば、他人の意見に耳を貸さないところがありました。
関東大震災ののち、家族の反対を押し切って、突然長男と次男を連れて世界漫遊の旅に出てしまったこともその性格の頑固さと奔放さを物語っています。
旅行の途中、長男が精神に異常を来たしますが、旅行を中止することなく漫遊を続けます。
この漫遊旅行で一体何処へ行ったのか、何を見てきたのかはこの本には詳しくありません。
ともあれ、帰国した渡辺金蔵は、早速二笑亭の建築に取り掛かり、この後十余年にわたり、実際に住むことが出来ない家「二笑亭」の完成を夢見て、日々己の「修養」を如何に二笑亭に開放するか、そのことだけを考えながら風呂に入り続けます。
和洋合体風呂、ガラス入り節孔窓、ホール左側の浮き彫り、土蔵にある昇れない鉄梯子、遠くにある使えない便所、不思議な階段を上がると、主人直筆の掛け軸「ごくろうなれどもるすばんたのむよだるまさん」、祠入口の口を閉じている新型狛犬、入り口が小さく、入ると壁にナイアガラの写真が貼ってある茶室、などなど。

しかし、建築開始の十数年後に、金蔵が精神病として入院することにより、二笑亭の建築は永遠に中止されます。
そしてその二年後に、金蔵の「修養」の具現的存在である二笑亭は、取り壊しになってしまいましたとさ。

うーん。漫画を読んだら、余計に「二笑亭奇譚」を読みたくなってしまいました。
今度のお休みの日にでも、古本屋巡りをしてこようかな。

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大根雄
栃木生まれ。
鉄割パソコン担当。
いたりいなかったりする。

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